ジェームズ・ディーンの遺作
『ジャイアンツ』
ジミーが魅せる大河ドラマ『ジャイアンツ』 |
恋愛映画なら『理由なき反抗』ではと思われるかもしれませんが、本作の根底に流れるラヴストーリーを見逃すことは出来ません。それは、痛ましい程の片思い。一生涯かけて愛しても手に入れることのできない愛を描いています。
テキサスの大牧場主ビック・ベネディクト(ロック・ハドソン)と東部出身の妻のレスリー(エリザベス・テイラー)の回想からこの映画はスタートします。巨大牧場の広大な土地にはビックと少年時代から育ったジェット・リンク(ジェームズ・ディーン)が居ます。彼は家族同様に扱われていましたが使用人に変わりはありません。
やがて、レスリーは三人の子供の母となり、テキサスにも慣れてきたころ、ジェットがほんの少し譲りうけた牧場の中の一部の土地から石油が湧き、一気に石油成金となるのです。この間にも家族の葛藤やビックとレスリーの娘ラズがジェットに熱を上げたりとドラマは展開してゆきます。
戦争で石油需要が急増し、ますますリッチになるジェットは、ホテルを開業します。アメリカ中の大物が集まるホテルの開業レセプションの時、主役のジェットはぐでんぐでんに酔い、何十年間も思い続けたレスリーへの思慕をしゃべり続けるのでした。事業に成功しても、どんな手段を使っても真の愛情を掴むことが出来なかった哀れで孤独な大富豪ジェット・リンク!
ジェームズ・ディーンの素晴らしい演技、髪を白くした終盤の鬼気迫る醜態ぶり。愛に恵まれない男の大河ドラマとして、本作は金より牧場を取るテキサス男、ロック・ハドソンの映画ではなく、ジェームズ・ディーンの壮大なる片思いと孤独が身にしみる映画なのです。
本作をジェームズ・ディーンの視点から恋愛の反面教師としてみることが出来ます。愛を得る手段は作戦やお金ではありません。誠実に接していれば……。そして、奪おうというスタンスでなければ、もしかするとジェットとレスリーが結ばれたかもしれません。
【作品情報】
・1956年/アメリカ映画
・上映時間:201min
・監督:ジョージ・スティーヴンス
・出演:ジェームズ・ディーン、ロック・ハドソン、エリザベス・テイラー、マーセデス・マッケンブリッジ、サル・ミネオ、ロッド・テイラー、キャロル・ベイカー、バーバラ・バリー、デニス・ホッパー
【関連記事】
・感慨の恋愛映画10選:日本・アジア映画編
・魅惑の恋愛映画10選:ヨーロッパ映画編
・感涙の恋愛映画10選:アメリカ映画編