ジャンル別の名作映画セレクト10のラヴストーリー(恋愛映画)は、アメリカ映画編に続きまして、ヨーロッパ映画からお届けします。アメリカ映画とは趣きの異なるアーティステックな作品集となりました。心に突き刺さる恋愛ドラマが多いかと思います。じっくりとご覧下さい。

※各作品共、物語の結末に触れていますのでご注意ください。

焼け木杭に危険な火がつき燃え滾る
『隣の女』

隣の女
偶然現れた昔の恋人。これは男女のホラー映画『隣の女』
本ページは現代の視点(70年~80年代)で描いた心に痛みを伴う恋愛映画3本です。トップはフランス映画『隣の女』から。

ベルナール(ジェラール・ドパルデュー)は、妻アルレット(ミシェール・ボームガルトネル)と幼ない息子とグルノーブル郊外に住んでいますが、ある日隣に夫妻者が引っ越してきました。その妻マチルド(ファニー・アルダン)は、8年前に別れた恋人だったのです。焼け木杭に火がついた二人は再び愛の焔に包まれ逢引きを重ねることになります。

ヌーヴェルバーグの旗手と言われた、フランソワ・トリュフォー監督の晩年のこの官能のドラマは、文芸作というよりは、女性の情念を前面に推し出したメロドラマタッチの俗っぽさで、それが鬼気迫るリアリズムとなって観る者を戦慄させます。

ラスト、セックスの最中に拳銃の引き金を引くことで禁断の愛に決着をつけます。他者(二人以外)への不都合な想いが、地獄への愛の逃避行へと駆り立てた女の、そら恐ろしい情念を描いた傑作です。

・1981年/フランス映画
・上映時間:106min
・監督:フランソワ・トリュフォー

進歩派を装う男の心の奥に潜む嫉妬心
『テス』

テス
男は過去を話てごらんと言う。話してはいけなかった『テス』の物語
イギリスの文豪トマス・ハーディ原作『ダーバヴィル家のテス』の映画化です。19世紀末、貧しい農家の娘テスはダーバヴィル家に奉公に出されます。テスはダーバヴィル家の放蕩息子アレックに子供をはらまされ、なんとか実家に戻り出産しますが、赤ん坊はすぐに死んでしまいます。

やがてある酪農場で働くことにしたテスは、そこで、農業の勉強をしに来ている牧師の息子エンジェル(ピーター・ファース)と知り合い、このまじめで進歩的な青年に心を惹かれます。エンジェルはテスに正式に結婚を申し込むのですが、暗い過去をもつテスは、この申し出を拒み続けます。

それでも、結婚に至りハネムーンを過ごすためにやってきた別荘で、テスはアレックとの一件を告白するのですが、話を聞いたエンジェルは別人のように冷たくなります……。

犯されて出来た子供は死し、進歩派を装う恋人にも裏切られ人生に追い詰められたテスは、そして殺人を犯し、堕ちて行く…どんどん堕ちてゆくのです。あまりに悲しい転落の人生。テスの愛情はいつも本物でしたが、テスへの愛はいったいどこにあったのでしょうか?

・1979年/フランス=イギリス映画
・上映時間:172min
・監督:ロマン・ポランスキー

カラダの相性が理屈を超えた男と女の物語
『ラストタンゴ・イン・パリ』

ラストタンゴ・イン・パリ
公開当時、本国イタリアではすぐに上映禁止となり、各国でも芸術かワイセツかでセンセーショナルを起こした『ラストタンゴ・イン・パリ』
『暗殺の森』『ラストエンペラー』などで知られる名匠ベルナルド・ベルトルッチの問題作です。本作を「恋愛映画」のカテゴリーに入れるかどうかは悩むところですが、性の虜になった男女の姿をこれだけ真正面から捉えた作品もなく、社会的繋がりをカラダ(セックスの相性)が凌駕するフィジカルラヴストーリーとして取り上げます。

名も知らず、過去も一際明かさずセックス以外の関係を持たぬ二人は、孤島のようなアパートの一室で会い、オスとメスになって肉欲のみに身を焦がします。

肉体だけで繋がった二人に「愛という感情」が介在しはじめることで、この関係性の終末は想像するに難くありません。悲劇的なラストの女の一言が全てを物語っていました。「この人が私をレイプしようとしたの。彼の名前?知りません。どんな人なのかわかりません」……と。

・1972年/フランス=イタリア映画
・上映時間:129min
・監督:ベルナルド・ベルトルッチ
・主演:マーロン・ブランド、マリア・シュナイダー

次ページは、あまりにも有名なラヴストーリー『ひまわり』、『ロミオとジュリエット』、『男と女』、『恋人たち』の4本です。