クリント・イーストウッド監督 来日会見(4ページ目)

『硫黄島からの手紙』[Letters from Iwo Jima]

キャスト陣には才能豊かな顔ぶれがそろった。記者会見中は「監督」と言わず、「クリントは……」と話してくれた渡辺氏、伊原氏……だけかと思ったら、なんと二宮氏も「クリント」と呼んでいました。よほど雰囲気の良い現場だったのでしょうね。

渡辺謙：「昨日無事に撮影が終わりました。自分で、この栗林役を受け止めることができるのだろうか？と。それは重い課題でした。戦争映画だと怒号が飛び交って、殺伐とした現場になる可能性が高いのですが、とにかく穏やかな現場でした。日本と海外でフィールドをひろげるなかで、こんなにもグローバルな日本人がいたんだ！と。今役をいただいた意味が分かりました。日本とアメリカ、日本と世界の架け橋になる作品だと確信を持っています。」

西郷役は、若者に絶大な人気を誇るグループ＜嵐＞のメンバーで、映画『青の炎』ドラマ『優しい時間』、また舞台『理由なき反抗』など各方面より、その演技力で注目を浴びた二宮和也。本作では、愛する妻に「必ず生きて帰る」と約束しながらも、栗林と運命をともにすることになる心優しき兵士を演じる。

二宮和也：「自分の中で、人間の部分をなくさないように、人間であり続けることを一番に考えました。いろんなことを自分のなかで受けとって、次に進む作業を一生懸命にしました。アメリカでの撮影は、初めてのことで。素晴らしいスタッフ、出演者とお仕事できて、この作品に関わったことが嬉しいです。出来上がりを楽しみにしている一人です」。現場での思い出は「実際にソコにいたかのような気分になりました。『もしそうだったら、どうなってるんだろう？』って、考えている間に撮られていて、「もうオーケーだよ」ってこともありました（笑）」。

大物監督との仕事には、「最初は会うのが恐かったけど、会った時に、ずっとピーナッツを食べていて、殻をぽろぽろこぼしていたんです」、それを見て『これなら一緒にやっていける』と思ってホッとしたそうです。今の髪型＝坊主は、「なれていて、お気に入りです」と、青年らしい素直な発言が続きました。

映画『半落ち』『みんなのいえ』、舞台「浪人街」などの演技で知られる伊原剛志が演じるのは、1932年のゴールドメダリスト。乗馬では日本で唯一の金メダル保持者「バロン西」こと、西竹一（にしたけいち）。

伊原剛志：「キャスティングされたことを聞き、車の中で、天井に頭をぶつけるぐらい喜んで、次の日に本当なのかな？と不思議な気持ちになって、乗馬の訓練をはじめました」。その結果「1メートルの障害が飛び越えられるようになりました」と穏やかな口調だ。アメリカでの撮影時のエピソードとして「剛志（つよし）の発音がし難いらしく『トュヨシ』や『チュヨシ』と呼ばれていた」ことや、「でも、あるとき気がついたら、メモに写真が張ってあって役名と名前が書いてあったんです」とアメリカのスタッフの影の努力を語ってくれました。
　
　『パッチギ！』『スクラップ・ヘブン』など日本映画はもちろん『about love関於愛』などアジア映画でも若々しいエネルギーに満ちたユニークな演技を見せ、映画界から注目を集めている加瀬亮は、理想主義に燃える元憲兵隊員、清水洋一を演じた。会見では、表側こそシンプルに見えるブラックのスーツだったが、背中側はグレー時に赤と白のストライプ、袖背面は青系のストライプと、やはり凝ったスーツでした。

加瀬亮：「最初に本を読んで、戦争のことは、自分で理解できなかったり、分からない部分もおおかったのですが、個人の思いに目を向けたときに、あることに気がつきました」。現場は「いったんなじんでくると落ち着いた状態で、その場所に入れました。心地よかったです。監督は現場では座らずにいつも役者のそばにいてくれたので心強かったです。」
　
　そして、映画『ピンポン』『いま、会いにゆきます』で高い評価を受け、さらにジェット・リーと競演し、『SPIRIT』で世界に飛び出した歌舞伎界の寵児、中村獅童が、最初は栗林の奇策を拒む厳格な兵士、伊藤大尉を演じる。

中村獅童：「日本人として何ができるか？」と責任感を感じつつ参加した現場で「文化交流ができればいいなと思ってアメリカに向いました」。撮影中は「提案もさせてもらえたり、芝居にかんしても自由にやらせていただける監督で、日本と居るときとかわらずノビノビ」していたそう。撮影時のエピソードは「現場には、クロアチア出身のシェフが居て『FIFAワールドカップで100ドルかけないか？』といわれました（笑）。※日本はクロアチアを同じグループ。『かけはしない』と断りましたが顔をあわせるたびに、「クロアチア」「日本」と言い合ったことを覚えています。ですから日本代表に勝ってもらいたいです」と発言し会場に笑いをもたらせました。

＜硫黄島プロジェクト第1弾＞『父親たちの星条旗』[Flags of Our Fathers]について