テクノポップ/フューチャーポップ

Perfume対談~アイドル・バトル(6ページ目)

けろっぐ博士とオカチメンコ助手を迎えてやっている恒例Perfume対談ですが、『マブ論』を発端によしの番長が『BUBKA』片手にPerfume対談に殴りこみ!

四方 宏明

執筆者:四方 宏明

テクノポップガイド

アーティスティックなアイドル問題

先生:
アイドルが自分で世界観を作ろうとして、例えば「ロックやります!」なんて言ってまともなものが出来たためしはほとんど無いでしょう。九分九厘、大きな勘違いで終わります。

番長:
そうですね。昨年のサマーソニックで一緒に見た土屋アンナは、事故防止の為、ペットボトル持ち込み厳禁の会場で、ステージ上から飲みさしのペットボトルを何本も放り投げて、「ハナタラシを上回る凶行」と僕も先生も大喜びでしたね。

そこらへんの脱線はともかく、今回、Perfumeによって、「アーティスティックなアイドルとは」について考える切っ掛けとなりましたし、そういう意味で、 往年の小泉今日子と比較すると面白いですね。

先生:
小泉今日子もクラブ系に接近していた時期がありましたね。ただ彼女の場合、楽曲的にはそれほどでもなく、アティチュードとしてだと思います。Perfumeはアティチュード的にはあくまでもアイドルなんですが、楽曲的、そこから作る世界観がアーティストなんです。

番長:
いや、先生、でも、「Perfumeから出て来る世界観をアーティスト」と言うのは、少々無理があると思います。近未来と言う世界観だって、レトロフューチャー、サイバーパンク、廃墟。と色んな表現世界があるわけで、Perfumeの表現している「近未来」を解釈しても、具体的にどんなことか思いかびませんし、強引に解釈しても「10年後の新宿のゲーセン」くらいしか思い浮かびません。クラフトワークの曲を聞いて行くと、人間は油圧駆動の鋼鉄製歯車ロボットになって行きそうな印象を持つのですが、Perfumeの提示する「近未来感」は漠然として居る訳です。

先生:
漠然としていて良いんですよ。世界観なんですから。

番長:
しかし、アイドルが「他人の構成した、細かく作り込まれた世界観」を表現すると言うことは、アドリブが一切効かない事を意味します。世界観の内部は、意図的にぼかしておいて、アイドルにアドリブの余地を与える。つまり、「世界観内部を細かく作り込まない事」がアーティスティックなアイドルの特徴とも言えます。「アーティスティックなアイドル」と「アイドルっぽいアーティスト」(例えば、かの香織は、「イタリア未来派~60年代ポップアート」と世界観が具体的に作り込まれています)の判別は、ここらへんを水準器に使うと良いのかもしれません。

先生:
確かに「love the world」なんかには特に具体性のある近未来は提示されていないのですが、ジャケ、ファッション、PVとかから記号が読み取れると思います。大きな世界観ではないですが、逆にそれが新鮮なんですよね。

番長:
なるほど。 記号性と言うと、初期と最後期のYMOですね。赤い人民服に共産主義的ニュアンスが有った訳でもなく、散開ツアーの軍服にファシズム的なニュアンスが有った訳でもなく。

先生:
実はかの香織は大好きです。特にショコラータの時期の! あれは演じていたとしても、素晴らしい演技です。ソロになって、いい曲もあるんだけど、エッジは無くなったと思いますが。

番長:
ところで、僕はソロになってからのアクが抜けたかの香織が好きですね。あ、そういえば、「アーティスティックなアイドル」で言うと、原田知世もそうですね。世界観は歴然と存在しているけど、世界観の中身が見えないと言う。あと、元祖、「アーティスティックなアイドル」小泉今日子は、バブルの頃に、「コイズミ・イン・モーション」と言うFM番組があって、それは藤原ヒロシの選曲に従って、小泉今日子が、それなりの世界観をあやふやに語るだけだったんですけど、アドリブで奔放に喋ってて、聞いてて本当に楽しかった。21世紀の今、中田ヤスタカのDJにしたがってPerfumeが喋る「Perfume in mortion」と言う番組があれば、今の音楽好きは本当に幸せになれると思います。PerfumeはMCが魅力ですから。

先生:
番長、いい事も言うじゃないですか。「Perfume in motion」採用です。
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