アレンジ分析
博士:アレンジ・音色面においては、例えばクラブ系のアーティストにしてはレゾナンスをほとんど使わないのも特徴、ゆえ中田氏のクラブ系楽曲はちょっとトリップ感が希薄で歌モノほどの冴えが見られません。イメージの割に歌モノが意外と良い点はダフト・パンクを髣髴させます。
逆にエレピ等、非シンセ系音にに微妙なエフェクトをかけてきてなかなか通な一面を見せます。意外と生楽器音を多用し、オーセンティックなエレポップと一線を介します。 一方シンセは割合未加工の立つ音色を対位法的に使用する場合もあり、グランジやトランスと言うより往年のワルター(ウインディ)・カーロスを髣髴とさせる瞬間もあります(「Seventh Heaven」「ビタミンドロップ」等)。 また声にかかってるエフェクトはボコーダーではなく、プロツールの強制的にフラットに修正するPlug-in系ソフトであるのではないかと思われます。 このエフェクトはマドンナの「Die Another Day」あたりから一般化して、ボコーダー同様ロボット的なイメージとして多用されてきましたが、最近ではちょっと意味合いが違ってきつつあるのではないかと考えます。
先生:
それはどう言うことですか
博士:
要するにかつての“ウイスパーボイス”の現在的焼き直し・・という意味合いです。サウンド趣向のアーティストは声は楽曲の要素としてとらえています。 あまり主張して欲しくない一面、最低邪魔しない存在ではあって欲しい。 しかしファッション性や話題性も重視する結果、必ずしも歌唱力が伴わない場合も多い。その解決として、かつては“ウイスパーボイス”というある種の“逃げ”があった訳です。イマイチな歌唱もわざとやってるみたいな~逆にオシャレに聞こえたりしたものです。
しかし流石にウイスパー=オシャレ・・という時代は今では流石にアナクロです。 その新たなる答えとして、本人の抑揚を残しつつ 音程を強制修正するこのソフトはサウンド趣向のアーティストの意図と合致したといえます。すでにボコーダーの時の様に未来をイメージしたロボットボイスという役割は終えたと言っていいでしょう。
先生:
Perfumeがメディアで紹介される時、“無機質な”テクノポップのような表現が使われてると、違和感を感じるのですよね。「エレクトロ・ワールド」はテクノロックとか言われちゃうともう困惑します。このあたりのアレンジは、中田ヤスタカが80年代テクノポップよりも2世代くらい新しいクリエイターである事にも関係するでしょう。