先ずは、エールについて。フレンチ・おしゃれ系オタクのような二人、JB・ダンケルとニコラス・ゴディン。1998年のデビュー・アルバム『Moon Safari』で、一躍世界的脚光を浴びる事となる。アルバムは、Moog型モンド系ドリミィー風ポップトロニカの原型とも言える内容ですが、ウィスパー・ヴォーカルでニューウェイヴのスパイスも効いた「Sexy Boy」は彼らのトレードマーク的な曲。エールのユルユル感、これを受け入れるかどうかで好き嫌いが分かれるでしょう。
ミニ・アルバム『Premiers Symptomes』(1999年)、サントラ『The Virgin Suicides』(2000年)を経てリリースしたセカンド・アルバム『10,000 Hz Legend』(2001年)。BeckやBuffalo Daughterなどゲストを多数迎え、テクニカルな意味でサウンドも分厚くなったのですが、批評家の評判は芳しくありませんでした。やっぱり、ユルユル感が希薄なエールは、エールではないというのでしょうか。個人的には、変な盛り上がり感がある「Don't Be Light」とかは、好きですが。
「Don't Be Light」がいっぱい入ったリミックス・アルバム『Everybody Hertz』(2002年)や、いまいち意図不明なアレッサンドロ・バリッコ(Alessandro Baricco)との共作『City Reading (Tre Storie Western)』(2003年)のリリースを経て、2003年1月にリリースされた最新作『Talkie Walkie』では、前作からの反省か『Moon Safari』路線への回帰現象が見られます。全体的にストリングス・アレンジが美しく、ちょっとわびさびがあって、エールらしいのですが、2曲目の「Cherry Blossom Girl」の出来が他を圧倒している。こりゃ、もう、21世紀の10ccの「I'm Not In Love」。ラストは、『Lost In Translation』にも収録の「Alone In Kyoto」。