ウケる技術
バスタードポップの本質は、「ウケる」事だと断言します。アート的向上心とか言う前にいたずら心。DJとしては、バスタードポップをかけて、踊りやすかろうがそうでなかろうが、「何じゃ、こりゃ?」と思わせれば、しめたもの。ポップにおけるパロディー文化です。かなり強引ですが、この『ウケる技術』(2003年)は、人生の教科書とも言える素晴らしい本です。
本題に戻りましょう。現在も量産中のバスタードポップ、正直言ってピンキリです。一度聴いてパスしたくなる不出来な失敗作もあります。同時に、なるほど、やるな~とウケる佳作もございます。ただ、あまりにウケ狙いになると空回りしたりします。では、ここでウケるバスタードポップのパターンを分析します。
■既聴感覚
聴いたことのない曲をマッシュ・アップしても、やはり盛り上がりません。よっぽどマニア受けしたいのなら別ですけど。題名まで思い浮かばなくても、「これ、聴き覚えある」程度で十分です。両方ともならベストですが、せめて片方の曲は、そこそこメジャーな曲を選ぶのが無難でしょう。知らないものをいじっても、ウケない。
■異種交配
バスタードポップは既存ジャンルを破壊します。一番の革命かもしれません。それが、いかに安直な制作方法に頼っていたとしても。R&Bとエレクトロポップ(ウィットニー・ヒューストンとクラフトワーク)、アイドルポップとグランジ(クリスティーナ・アギレラとニルヴァーナ)などのマッシュ・アップなどがその典型的なコンビネーションです。これは、まだまだ開拓の余地があって、一見繋がらないジャンル曲を見事に繋げていくというクリエイティヴィティの勝負です。
■温故知新
ミノーグ姉妹が「Blue Monday」や「You Spin Me Around」という80年代ネタを使ったマッシュ・アップを自らの曲に使っていることは、リヴァイヴァル・ブームの要素も大です。これら場合は、異種交配度は低いですが、十分にウケる要素は出来上がっています。デスティニーズ・チャイルドと10cc(「Deadrock Child」)などは、異種交配かつ温故知新です。
■歌姫歌唱
マッシュ・アップの典型的なパターンは、Aトラック(アカペラ主体のトラック)とBトラック(演奏主体のバックトラック)の組み合わせです。そして、Aトラックには、いわゆる歌姫のアカペラが重要となります。例えば、「A Stroke Of Genius」で、クリスティーナ・アギレラのバックトラックでストロークスが歌うと言うパターンは考えにくいのです。
■価値変換
カッコイイものをBトラックに使って、一見ダサイもの(実はそうでもなかったりする)をAトラックに使うという行為自体が、ダサカッコイイ演出でもあります。パラダイムシフトが鍵です。当然、今後、日本でのバスタードポップにとってアイドル系や歌謡曲が重要になることは、十分予測されます。
ダサカッコウイイ>カッコイイ>ダサイ
■愛情表現
マッシュ・アップ・ミキサー自体が愛情を注ぐアーティストをやはりマッシュ・アップするケースに佳作が多いようです。Girls On Top名義でも活動したリチャードXがクラフトワークやヒューマン・リーグを愛しているように。それは、ストレートではなく、屈折した愛情であることも多いですが。マッシュ・アップにも魂がある。
もしかしたら、まだ続く・・・
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