期待を裏切らない楽しさ満載のライヴ
ファンの期待に応えるという意味では、ポール・ギルバートとビリー・シーンの二人が、トレードマークのトリッキーなプレイを幾度となく見せつけるのもMR.BIGらしいところ。こういったプレイはともすればキワモノ的扱いをされることもあるし、やりすぎるとイヤミになることもあるのだが、二人ともとんでもなくハイテクニックなので単純に楽しく見ていられる。それにもちろん、MR.BIGのファンはそれも楽しみに見に来ているのだということを、本人たちはよくわかっているから、嬉々としてワザを見せまくってくれるのだ。
ポールのギターソロではダブルネックギターで超速弾きとタッピングの嵐、その後はやはりダブルネックのベースを抱えたビリーと二人でタッピング合戦をやらかし、さらにはエリックとパットも登場して“人間カポタスト”で客席を沸かせてくれた。ポールとビリーの掛け合いやタッピング合戦は、ソロタイム以外にも曲の合間やイントロなど随所に入れられていたし、曲中でビリーがハープを吹くときにエリックが後ろからベースを弾く“ニ人羽織”プレイも見せるなど、ファンの見たがっているものは惜しまず全部見せようという意識が感じられた。
2時間半のライヴを通じて、MR.BIGの曲の良さもよく伝わってきた。前半のようなアップテンポのナンバーはノリがよくて楽しいのはもちろんだが、「The Whole World's Gonna Know」や「Promise Her the Moon」などちょっとへヴィなナンバーを続けた後半でも、メロディがポップで聴きやすいので、ライヴ終盤でも飽きずに楽しめるのだ。中盤のアコースティックタイムでは、エリック・マーティンのヴォーカル、そしてコーラスハーモニーの良さもよくわかった。ポールとビリーのトリッキーなプレイばかりが話題になりがちなMR.BIGだけれど、いい曲をたくさん持っているからこそ、長い間愛されてきたのだということを実感させられた。
アンコールでもファンの期待を裏切らず、「To Be With You」や「Colorado Bulldog」といった人気ナンバーに始まり、ディープ・パープルの「Smoke On The Water」では全員がパートを入れ替えてプレイ、日本のファンへの感謝を込めた「I Love You Japan」、そして最後はビリーがタラスやデイヴ・リー・ロス・バンドでやっていた「Shy Boy」と、みんなが聴きたいと思っていた曲をずらりと並べてくれた。
いい曲が多いし、その合間には超人的なワザによる見せ場がいくつもあるという、エンターテイメント要素たっぷりのライヴは、とても満足感のあるものだった。なおこの日のライヴは完全収録のCD/DVDとしてWHDエンタテインメントから発売される予定になっている。不運にもライヴを見逃した人はもちろん、ポールとビリーの達人技をじっくり見たい人にも最適だろう。