唸りをあげるサックスの系譜

4~6月はピアノに焦点をあてましたが、7月~9月ではサックスに焦点を当ててみます。サックスの音色と音域(※アルトサックスの場合)は、もっとも人の声に近いと言われ、アドリヴを行うのにもっとも向いた楽器といわれます。

実際、ビバップ(40~50年代)のスターであるチャーリー・パーカー、ハードバップ(50年代後半)以降のスターであるコルトレーン、ロリンズなどはみな、サックス奏者でした。ここにあげた三人のアルバムを追うだけでも、ジャズがもっとも華やかだった時代の音楽を知ることができるでしょう。

■7月:チャーリー・パーカー『ナウズ・ザ・タイム』
チャーリー・パーカー『ナウズ・ザ・タイム』
チャーリー・パーカー『ナウズ・ザ・タイム』
1952年。
曲目
1. ザ・ソング・イズ・ユー
2. レアード・ベアード
3. キム(別テイク)
4. キム
5. コズミック・レイズ
6. コズミック・レイズ(別テイク)
7. チ・チ(別テイク)
8. チ・チ
9. チ・チ(別テイク)
10. チ・チ
11. アイ・リメンバー・ユー
12. ナウズ・ザ・タイム
13. コンファメーション
ジャズを聴くにあたって、これを聴かねばモグリ、といっていいものがいくつかありますが、チャーリー・パーカーはその1つ。とはいえ、最初からパーカーを聴く必要はない、というのは私の持論です。

理由はいくつかありますが、まず、録音状態がよくないということ。また、パーカーの演奏は、慣れないうちはテンポが速すぎることもあって、あまりゆっくり楽しめないということがあります。

とはいえ、この記事の、1~6月の紹介アルバムを一通り聴き込んでいただいた皆さんであればきっと、パーカーのアドリブの切れ味や、創造性のものすごさをご理解いただけることと思います。

本作はバードの晩年(といっても30代ですが)に録音されたものであることや、市場にもっとも出回っている録音であるためにいわゆる「バードファン」(※「バード」はチャーリーパーカーの愛称)にはあまり評判がよくない一枚ですが、個人的には演奏そのものはいいと思っていますし、また録音状態は他のものと比べるべくもないのでこれをご紹介しました。

■8月:ジョン・コルトレーン『マイ・フェイヴァリット・シングス』
ジョン・コルトレーン『マイ・フェイヴァリット・シングス』
ジョン・コルトレーン『マイ・フェイヴァリット・シングス』
ジョン・コルトレーン (アーティスト, 演奏), マッコイ・タイナー (演奏), スティーヴ・デイヴィス (演奏), エルヴィン・ジョーンズ (演奏)
曲目
1. マイ・フェイヴァリット・シングス
2. エヴリタイム・ウイ・セイ・グッドバイ
3. サマータイム
4. バット・ノット・フォー・ミー
続いて紹介するのはジョン・コルトレーン。おそらく、アルト、ソプラノサックスを吹く人で、彼の影響を受けていない人はいない、と言い切ってもいいくらい、多大な影響を後世に残したミュージシャンです。

彼の残した演奏には多様な側面がありなかなか一言で表現をすることははばかられるのですが、ここでは1曲目の「マイ・フェイバリット・シングス」に見られるような、長~いソロについて。

ジャズ初心者にとってどうしても敷居が高くなってしまいがちなジャズの長~いアドリブ。この系譜は、どうやらジョン・コルトレーンにあります。「瞑想的」と形容されることもある、似た音形を繰り返し繰り返し積み上げていくようなソロスタイルは、求道者という異名も持っていたジョン・コルトレーンが得意とするスタイルでした。

ジョン・コルトレーンは本国、アメリカでの人気もさることながら、日本のジャズファンの間での人気が特に際立っています。遊びにも出ず、自宅に引きこもって練習を続けていたという道を究める姿勢が、日本人の好みに合っていたのかもしれません。また、若くしてこの世を去ったというところも、趣味に合ったのかもしれませんね。

ともあれ、サックスのひとつの形を作り上げた一人であることは間違いなく、現代でも、サックスを聴くのであれば忘れてはいけない一人です。

■9月:ソニー・ロリンズ『サキソフォン・コロッサス』
ソニー・ロリンズ『サキソフォン・コロッサス』
ソニー・ロリンズ『サキソフォン・コロッサス』
1956年
1.St. Thomas
2.You Don't Know What Love Is
3.Strode Rode
4.Moritat
5.Blue 7
サックスではもう一人、忘れてはいけない人がいます。ソニー・ロリンズ。70歳を越える今も現役を続けている巨人です。

彼が若干20代でジャズシーンに鮮烈に売り出したリーダー作が本作。ほとばしるようなパワーにあふれた演奏で、テナー・サックスを志す人間が避けて通れない作品となっています。

この作品を紹介した理由はもうひとつあります。それは、ロリンズがカリブ海ミュージックのアイデンティティを強く持っていたということ。「St. Thomas」や「Moritat」には、そんな彼の独特のリズム感が良く出たアドリヴとなっています。

基本となるリズムとは別に、個々のミュージシャン独特のリズム感、タイム感が色濃く表れる音楽、それがジャズなのです。

いよいよ最後「10~12月は最先端ジャズの展開をご紹介!