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ジャズはアートか 『汎音楽論集』を読む

ギタリスト・高柳昌行生前の貴重な発言を集めた『汎音楽論集』が昨年出版された。ジャズはアートなのか? アートだとすれば、どのようなジャズがアートなのか。いまさらながらの問いが掘り起こされる。

執筆者:鳥居 直介

ジャズはアートなのか? それともエンターテイメントなのか? この問いに対する「アートであり、エンターテイメントでもある」という答えには、何の不備もないように思ってきた。しかし、本書『汎音楽論集』を読み、改めて問い返された。ジャズはアートなのか? アートだとすれば、どのようなジャズがアートなのか。

ジャズレジェンド・高柳昌行の言行録


高柳昌行『汎音楽論集』
高柳昌行『汎音楽論集』
「コルトレーンなんて歌謡曲なんだ」「聴衆にも(音楽家と)同レベルの聴取能力が求められるのは当然のことである」など、音楽活動と並び過激な言論活動を行った高柳昌行の言行録。
「高柳昌行」と聞いて、読者の皆さんの脳裏には何が浮かぶだろうか? おそらくもっとも多くの方々の頭に浮かぶのはギター4台をモーターで自動演奏しつつ、金属の棒などで弦をはじき、今日のノイズミュージックのさきがけとなった、過激なフリーアプローチに至ったアーティストの姿ではないだろうか。

昨年12月に月曜社より発行された『汎音楽論集』(高柳昌行著)は、1991年に亡くなった高柳の生前の執筆物をまとめたものである。演奏の過激さと同じく、舌鋒鋭く音楽家、批評家はもちろん、マスコミやレコード会社、一般聴衆まで含めた批評を展開した高柳。本書では、スタンダードなアプローチからフリーフォームまで、本当に幅広く、深い音楽活動を貫き通した高柳の「思想」に触れることができる。

基本的には、研究家、あるいは音楽マニア向けの書籍であり、あまりガイドサイトでご紹介するにそぐわない内容ではあるのだが、いろいろと現在の音楽シーンに照らし合わせて思うところがあったので、ここではあくまで本書の「書評」として、音楽を取り巻くさまざまな問題を取り上げてみたい。

次ページでは、高柳の主張を要約してみます


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