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JAZZ GIANTS Vol.6 バド・パウエル

ジャズの偉人を紹介するシリーズ、今回は破滅型天才ピアニストのバド・パウエル。悲劇とも言えるその姿を振り返る!

執筆者:佐久間 啓輔

文章: 佐久間 啓輔(All About「ジャズ」旧ガイド)

モダンジャズピアノの父バド・パウエル(1924~1966)は、破滅型ジャズメンの典型と言ってもよいかもしれない。麻薬やアルコールに依存したバド・パウエルは、映画『ラウンド・ミッドナイト』(1986年)のモデルとも言わている。41歳で幕を閉じたバド・パウエルの姿にせまってみたい。

※ジャケット写真がAmazon.comにリンクしています。


バド・パウエルは40年代後半から50年代にかけて、モダンジャズピアノの新たなスタイルを築いた天才ピアニスト。同年代に活躍した奇才セロニアス・モンクと比較すると、ピアノプレイに関してバド・パウエルのスタイルは正統派と言える。チャーリー・パーカーらと共に、ひたすらビバップを追求している。しかしその人生は悲劇そのも。その様子は映画『ラウンド・ミッドナイト』で描かれているので一度ご覧頂きたい。

映画『ラウンド・ミッドナイト』(1986年)

本物のジャズメンたちが架空のジャズメンを演じることで当時話題になったこの映画の主演は、テナーサックスのデクスター・ゴードン(この後、デニーロ主演の『レナードの朝』にも出演してました)。ニューヨークで破滅的な生活を送る天才ミュージシャンが、パリに新天地を求め、そして…、という映画です。まさにバド・パウエルがモデルなのでしょう。ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、フレディ・ハバード、ロン・カーター、トニー・ウィリアムスその他大勢のそうそうたるジャズミュージシャンたちが台詞付きで出演しています。

ニューヨークを舞台にパーカーらと共にビバップを追求し脚光をあびるも、デリケートな天才ピアニスト、バド・パウエルは人種差別問題をかわきりに様々な問題に直面する。しかしアルコールや麻薬におぼれ破滅してゆくバド・パウエルに一筋の希望を投げかけたのが、パリという土地であったようです。アフリカ系のジャズ・ミュージシャンをあたたかく迎えてくれるパリに、当時多くのミュージシャンが希望をたくしていました。移住してしまったミュージシャンも少なくなかったようです。

パリの名門ブルーノートでのバド・パウエルの当時の映像が残っていますが、フランス人サックス奏者のバルネ・ウィランにむかえられて、トランペットのクラーク・テリーらと共に生き生きと演奏している姿を見ることができます。その反面、ピアノを離れた当時の映像を目にしたことがありますが、うつろな目をした情緒不安定なバド・パウエルの姿がそこにはありました。

警察に暴行を受けただの、電気ショック治療を受けただの、暗いエピソードが多いバド・パウエルですが、フランスへの演奏旅行は新天地を求めるアフリカ系ミュージシャンの姿を描いた映画『ラウンド・ミッドナイト』そのものだと言ってよいでしょう。暗いエピソードと言えば余談ですが、バドの実弟であるピアニストのリッチー・パウエルが、自動車事故で天才トランペット奏者クリフォード・ブラウンと共に若くして他界しています。

バド・パウエルの代表作としては皮肉にも初リーダー録音を含む『バド・パウエルの芸術』があげられるでしょう。晩年の録音に、生気を欠いた痛々しい演奏が見受けられるようになるだけに、本作、20代ながら完璧なビバップイディオムを機関車のように演奏するすがたが天才ぶりを強調するようです。

ボロボロになりながらも死ぬまで演奏を続けるジャズメンの象徴的存在であるバド・パウエルが、後世に与えた影響は負の部分もあったかもしれません。しかしその圧倒的なビバップイディオムは、その後のピアノスタイルをより洗練されたものにし、現代においても脈々と受け継がれていると思います。


関連リンク:海外のピアノ・キーボード奏者

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