衝撃だったコクーン歌舞伎第一弾。そして今回で第九弾
渋谷コクーン歌舞伎第一回といえば忘れもしない1994年。演目は『東海道四谷怪談』だった。今と変わらず歌舞伎漬け生活を送っていた筆者にとって、渋谷のシアターコクーンという現代劇のメッカたる劇場で歌舞伎公演が行われると知ったときの驚き! それも中村勘九郎さん(現・勘三郎)と串田和美さんが組むと知って、「何をおいても見逃してはならない!」とアドレナリンが出まくったのを覚えている。
初日に電話予約。PHSも携帯電話も持っていなかったので、実家に頼んで電話予約してもらった。「とれた?」と矢のような催促を親にした覚えがある。だったら自分でかけろよという話だが。
とれたのは最前列。公演当日、最前列はビニールシートが配られる。どうやら水がかかるらしい。きゃー!それだけでもう興奮。そして座席は椅子ではなく平場席。そういう演出も今では歌舞伎ではもう珍しくなくなったが、当時は「私の横を役者が走る!?」 それだけでうれしかった。
そして幕が上がり・・・。突っ走り続けた勘九郎さん一座。興奮冷めやらぬ客席。いつもは長い歌舞伎が(歌舞伎好きにとっても長く感じる時は長いし、退屈なときは退屈だ)、最初から最後までワクワクしっぱなしだった。
「歌舞伎の役者だってこんなことやっていいんだ!」 と、わけの分からぬ頭で納得しながら帰途についた。
仕事でもプライベートでも、疲れというか先の見えなさとか、なんとなく煮詰まっていた自分にとって、このコクーン歌舞伎第一弾は新鮮な衝撃だった。心からスカッとしたし、野暮な言葉だがまさに「力をもらえた」時間だった。芝居はこうじゃなくちゃ!と心から思える一撃だった。
第九弾となる今回の演目はおなじみの『夏祭浪花鑑』(なつまつりなにわかがみ)。
大阪、東京、平成中村座NY公演を経て、この5月には平成中村座公演としてヨーロッパにお目見え、そして6月に「進化した」形となって渋谷に戻ってくる予定という。
その製作発表が先ごろ行われた。