劇場全体が火の粉に覆われて!?
さて、ストーリーだけを追っていくと、いやはやなんとも凄まじい内容なのだが、それを覆ってあまりあるのがやはり友右衛門と数馬の恋。チラシにもあるとおり、染五郎の友右衛門は月代もきれいに沿った侍のこしらえ。一方愛之助の数馬は、前髪を残した振袖も可愛らしい色若衆のこしらえ。
一目ぼれしてからは、ずんずんとアタックする染五郎の友右衛門。人が恋に溺れている図は、はたから見ると滑稽だったりするものだが、まさにそれ。惚れた相手に骨抜きになっているちょいとユーモラスな友右衛門を、染五郎が艶と愛嬌で面白く見せてくれる。単に耽美な美少年達の愛の図で終始していないところが、この芝居の面白いところだ。
上方では筋書きを「番付」と呼ぶ |
一方の数馬役愛之助も、そのアツーい、暑苦しいくらいの一途な想いを生まれて初めて受け止めて、うれしいより何より、まずはかなり驚く。その動揺を隠せない心ココにあらずな様子を、こちらもおかしみを交えた芝居で応える。
一目ぼれした若衆のために、侍という立場を捨てて中間に身をやつしてまで追ってくる友右衛門の思いの強さ! あれだけ思いをかけられたら、そりゃ数馬も正気ではいられまい。この二人の見初めから再会までのやりとりは、芸達者な二人だからこそ、(ドキドキさせられながら)たっぷり堪能させてもらった。数馬の部屋での逢引のシーンでも、ロマンチックなだけでなく思わず笑いを誘う見どころまでおまけ付き。
ここでちょっと江戸時代へワープ!
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