●二つの演目をご紹介しましょう。
『息子』
築地小劇場など新劇運動家のイメージが強い小山内薫ですが、二代目市川左団次や初代中村吉右衛門との深い関わりがあります。また、同作品の初演は大正12年3月の帝国劇場。六代目尾上菊五郎の息子・金次郎に、父親に四代目尾上松助、捕吏に十三代目守田勘弥がつとめています。
<突然、火の番小屋の老人のところへ飛び込んでくる若い男。その男の身の上話を聞く老人。どうやらその若者は老人の息子らしい。追われているらしく捕吏の手をすり抜け逃げ去るが・・・。>
「かつて二代目尾上松緑と初代尾上辰之助(三代目尾上松緑)でやっておられるのを思い出します。辰之助さんの息子役は、江戸前でとってもカッコよかった。歌舞伎ですから、江戸の粋な感じが前面に出ていた。
ただ今回戯曲を読み直し、息子の男性はもっと野暮ったい男だと気づいたんです。原作に忠実にして、ちょっぴり歌舞伎色を薄めて、リアルにやってみることにしました」(竹柴さん)
さらにこのときの父と息子について、
「松緑さんは、『辰之助が入ってきたときから金次郎(息子)だと気づいている心でやってるよ』とおっしゃっていた。今回はその辺もじっくり読み直してやってみたい」(竹柴さん)