歌舞伎/歌舞伎関連情報

チームワークとパッションの見せ所。2

若手役者の登竜門「三越歌舞伎」で中村獅童と市川笑三郎、春猿、猿弥、段治郎他澤瀉屋一門がうれしい顔合わせ。演目も近松作品の『女殺し油地獄』と華やかな義太夫狂言の『車引』だ。

執筆者:五十川 晶子

●現代の事件を思わせるリアルな物語り。『女殺油地獄』

『女殺』で獅童の相手役となる市川笑三郎は、
「『三越歌舞伎』は初参加。由緒ある劇場でお吉をやれる。現在まさにいろいろな事件が起きている。古い時代の作品なのに共通点があるようだ」。

観どころは油の流れる中でお吉が与兵衛に殺されるシーン。油の代わりに舞台では水や寒天類が用いられることもあるという。
「臨場感あふれる殺し場となるだろう。サスペンスを感じていただけたらうれしい」。

片岡仁左衛門が今回監修をする。
「女房役のこのお吉は、与兵衛に対して恋愛感情があるのではなく、あくまで世話焼きのおばちゃん。そういう一人の女性が巻き込まれてしまった事件というハラでやりたいと思う。”思い入れをしないように、言動に色気加えずやってくれ”と松嶋屋さん(仁左衛門)からも言われている。

12年前に1度だけやったのだが、そのときと性根については同じ。だが今回ビデオを改めて観てみたら、演出が随分違っていたことに気づいた。前回は河内屋さんの実川延若の型で、今回の松嶋屋さんのとではかなり違う。前回と同じ性根で、前回と異なる演出のお吉という点も楽しみにしていただきたい」

また若いファンの多い澤瀉屋だが、
「今、さらにもう一つ若い世代の方が増えている。学生さんたちがきてくれていると思っている。獅童さんのファンの層との違いもあるかもしれないが、それも楽しみだ。

三越劇場はコンパクトで、いつもやっている狂言(演目)でも大劇場とは違う感じ。細かい部分を煮詰めて味のある作品にしたい」と、笑三郎は穏やかなリにも意欲を見せた。

「ハラを変えず型を変えて挑戦」(笑三郎)。
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