K そういえば辰次が「この中に逮捕されたことのある人いますかー」って台詞は・・・初演ではその文句はなかったはず(苦笑)。
S そういう”ネタ”って、歌舞伎って絶対取り込んでしまうよね。スキャンダルだろうがなんだろうが、話題を自分から提供するという。
K 獅童・結婚ネタや、染五郎・おめでたネタもあったな。『弥次さん喜多さん』ネタや『阿修羅城』ネタも。
S とにかく、ことほどさようにメタ歌舞伎でしょ。
K 確かに、ふだん古典作品で観ている歌舞伎を構成する要素が、いったんバラされて再構築されている感じは、確かにしたな。舞台装置、照明、役者、・・・そうか、音楽もだ。
途中で竹本の太夫が一人、辰次の側まで行って、義太夫節を語りに語って戻っていった。義太夫狂言って文楽(人形浄瑠璃)が基じゃない? どこまで役者が台詞で言って、どこから太夫が受け取って語り始めるか。人間がとこから人形になるかというその切れ目の部分が面白いって思うんだけど、その「切れ目」についてかなりデフォルメされてるように見えたなあ。
S ふだん観ている歌舞伎って、ちょっと観方をずらすとこんなふうに見えてますよーっていうメッセージが、実はあるんだろうな。
K それを、歌舞伎の構成要素の最大のパーツとしての、役者である自身も含めてやってるわけだよね、勘三郎。
S 実は、俺、始まってからずーっと、「勘三郎の代わりに野田秀樹が辰次を演じたらどうなるだろう」って思いながら観てた。野田秀樹は、作家・演出家、そしていい役者でもあるじゃない? 野田秀樹がやった姿を想像してそれとあまり変わらなかったら、「歌舞伎役者って何なんだ?」って思ってやろう!ってイジワルに観てた。
K なるほどね。で、どうだった?
十八代目勘三郎襲名披露制作発表より |