さて前回の深川に続き、今回は本所から向島方面へと足を延ばします。
柳島妙見堂
亀戸天神付近で腹ごしらえをして向かったのは柳島の妙見堂。
ここは10月歌舞伎座夜の部で上演される『お染久松色讀販』でも登場します。
現在大きなマンションの1階になっており、傍目にはそれとは分かりにくいのですが、境内に入ると近松の祈念碑などもあります。
ここはご存知初代中村仲蔵が、講談などでも知られたように『忠臣蔵』の定九郎の役つくりのためにお参りしたところ。妙見様に日参し満願の日に夕立に会い蕎麦屋に飛び込んで見かけた浪人からアイデアを得たというものです。
妙見大菩薩とは真言密教の仏様で、北斗七星を象徴とした天空の中心をつかさどる仏なのだとか。だからマンションの外壁に型とられた紋にも注目。
この妙見堂と、その側にある料亭橋本が『お染久松』の舞台となります。
お染が久松他、全七役に早替りするのが見所。まさにこの芝居が作られた文化文政時代は、早替り大人気の時代でした。
作は四世鶴屋南北。
押上方面へ向かうとそこにはその南北の墓のある春慶寺が。新しいビルの中にある寺ですが、ビルの外には墓石と役者達の石塔が建てられているのですぐに分かります。
南北に関する資料を物色していると、ここの住職さん、話し好きの親切な方で南北関連の本や冊子をたくさん出してくださいました。おまけに茶菓子まで。ごちそうさまでした。
本所は深川同様、南北の所縁の深い地です。『四谷怪談』に出てくる蛇山庵室や、南北が他の作品にも使う岩淵という地名は、北本所のあたりといわれています。