さわやかな読後感『紙しばい屋さん』
日系アメリカ人の母を持ち、横浜に生まれ育って16才で渡米した日系のアレン・セイの作品です。アメリカで出版されましたが、ある時代の日本の空気を色濃く写し取り、日本的な叙情に満ちています。ちなみに、コルデコット賞を受賞した『おじいさんの旅』はアメリカに渡った日系人の営みと故郷への思いを静かに語ったものでした。
『紙しばい屋さん』は、テレビの時代に人気を失い、廃業して何十年も経つ元紙しばい屋さんが久しぶりに町に降りてくる話です。車がいきかい、すっかり変貌してしまった町の中で観客もいない中、紙芝居の人気が衰えていった頃の話をしていくおじいさん。時代がさかのぼるところから、絵柄が紙芝居風に変わって、入れ子のような絵本体験を味わえます。最後は思わず笑みがこぼれてしまうような終わり方で、路上で紙芝居を見た経験のない世代である私にも、その魅力が感じられます。
悠仁さまにはまだ年齢的に早いと思われますので、紀子さま自身のご感性に響くものがあったでしょうか。あるいは、眞子さまや佳子さまなら、この作品の機微をお分かりになるかもしれません。もちろん、悠仁さまがお読みになる日も楽しみですね。
■『紙しばい屋さん』
作:アレン・セイ
出版社:ほるぷ出版
出版年:2005/2007.3
価格:1,575円(税込)