国際結婚を解消
彼女は、異国の地で独り疎外感に苦しんだ |
素朴な彼の人柄に惹かれ、交際が深まるうちに妊娠。彼は「ぜひ産むべきだ」と、アツコさんとの結婚を決める。アツコさんの年収は600万円、彼の年収は240万円。アツコさんは出産後も働くことを希望したが、彼の強い反対で辞めた。
「子どもを育てるお母さんは働くべきではない。僕が一生懸命働いて、お金を稼ぐから」。しかし日本では、彼が稼ぐ収入で親子3人が余裕ある暮らしをすることは難しい。アツコさんは、身重の体ではあったが、彼の故郷へ移り住むことにした。
海辺の生活は、快適だった。しかし、一人娘のアツコさんには考えがたいほどの兄弟姉妹、親戚たちが周囲にうじゃうじゃと集まって暮らしている。日本から来た花嫁に、彼らは複雑な態度を示した。プライバシーを侵害していると思えるくらい人懐っこすぎる人もいる。露骨に目も合わせない人もいる。彼は、
「みんな僕の家族だから、君も僕の家族を大切にしてくれよ」
と、取り合わなかった。アツコさんは、異国の地で独り疎外感に苦しんだ。肝心の彼の仕事はというと、日本人相手の観光ビジネスを友人と立ち上げると言って、全く進んでいる気配がない。その間の生活は、アツコさんの貯金を食いつぶすばかりだった。
「この人は、父親にはなれない」
そう判断したアツコさんは、臨月間近のある日、日本へ帰る決意をする。帰国した時の、実家の母の安堵したようなうれしそうな顔は忘れられない。日本で出産以来、都内のマンションで実家の母と、アツコさん、息子の3人で暮らしている。年金生活の実家の母がいるうえ、住んでいる区の社会保障が、助成金や医療費・保育料無料など母子家庭に手厚く、充実しているので、今のところ困ることはない。英会話講師としての仕事は継続し、年に一度は3人で海外旅行を楽しむ。
わずらわしいのは、別れるときに彼と約束した、定期的な国際電話である。息子が自分と話ができるように、必ず英語を教えて欲しいと言われたが、日本の保育園で一日の大半を過ごす息子は、簡単な英単語くらいしかわからない。息子との電話が終わるたびに
「なぜ英語が十分じゃないんだ。僕は父親なんだから、息子と話をする権利があるのに」
とまくし立てる彼に、アツコさんは心の中で「養育費も満足に出せないで、何が父親なのよ」とつぶやく。
シングルマザーに踏み出す要件とは
シングルマザーたちは、自分の腕だけで子どもとの生活を切り盛りする生活を日々こなし、精神的に鍛えられたタフな印象がある。「母と子だけの生活はシンプルで快適」。この言葉は力強い。安定したシングルマザー生活の要件とは何か。経験者は、みな口を揃えて
・ 住んでいる地域の社会保障
・ 自分の収入(+保険)
・ 実家の母
の確保だと言う。
マネーと保育が確保できれば、シングルマザーに踏み切れる、という力強い女性たち。「父親」でもあり「母親」でもあるという、いくつもの役割をこなす彼女たちの表情は、どこかすっきりとしている。
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