インク漏れのメカニズム、その対策など解説

筆記具のインク漏れと聞いて、真っ先に思い浮かぶのは、おそらく万年筆ではないだろうか。自分でインクを入れるということから、どうしてもそのイメージがある。しかし、今回は万年筆ではなく、ボールペン。
油性・水性・ゲルインクなど インクの種類にかかわらず、 インク漏れは起こり得る

油性・水性・ゲルインクなど インクの種類にかかわらず、 インク漏れは起こり得る

「え!ボールペンもインク漏れするの?」と驚かれる方も多いかもしれない。実は、ボールペンもしっかりと、というと語弊があるかもしれないが、インク漏れが起こる可能性をはらんでいる。

そこで、今回はボールペンをはじめとする筆記具メーカー各社で構成されている、日本筆記具工業会の事務局長 春田様にそこのところを色々とお伺いしてきた。
 

なぜ、インク漏れは起きるのか?

ボールペンのインク漏れには、大きく分けて2つあるそうだ。ひとつはリフィルの後ろ側からインクが逆流して漏れてしまうタイプと、ごくまれだが、ペン先側から漏れるというのもある。今回は、比較的起こりやすい前者のほうを取り上げる。

ボールペンには色々な形状のリフィルがあるが、どれもペン先の反対側には空気穴が設けられている。

ボールペンには色々な形状のリフィルがあるが、どれもペン先の反対側には空気穴が設けられている

ボールペンのリフィルに入ったインクが何故逆流してまで、飛び出してしまうのか。それは、ペン先に空気が入ってしまうということが最大の要因なのだ。

「ペン先に空気が入る」→「インクが逆流して漏れる」といわれても、いまいちイメージしにくい。ここで、わかりやすいように水の入ったコップとストローに例えてご説明しよう。

水の中にストローを入れて、ストローの飲み口に指でフタをして持ち上げると、ストローの先端に入った水は、下に落ちずにストローの中に保持される。しかし、押さえておいた指をはなすと、水は一気に下に流れ出す。誰もが一度は喫茶店でやったことがあるだろう。実はこれが、ボールペンのインク漏れと同じ原理なのだ。
 
ストローの穴を指でフタをした状態だと水は落ちないが、フタをはずすと空気が入って水は流れ出る

ストローの穴を指でフタをした状態だと水は落ちないが、フタをはずすと空気が入って水は流れ出る


ボールペンのリフィルをペン先を上にしてみる。当然ながら反対側からは、インクは流れ出ない。ちょうどこれは、先ほどのストローを指でフタをしたのと同じ状態。つまり、ペン先のボールがフタの役割を果たしてインクが落ちないという訳だ。

しかし、ひとたびペン先に空気が入ってしまうと、中のインクは逆流を起こしかねない。ペン先に空気が入ったからといっても、すぐにインクが逆流を起こすわけではない。初期症状としては、まず筆記時のインクのカスレがおこる。この状態で使い続け、何かの拍子で中に入った空気と外の空気がつながりその空気の量が多くなった時、まさにストローのフタをはずした状態になり、インクが漏れ出してしまう。
 

知らず知らずのうちにペン先に空気が入ってしまうことも

ペン先に空気が入ってしまう最大の原因、それは、ペン先を上向きにして筆記することに尽きる。

こういうと、おそらくほとんどの人は「私は、上向き筆記なんかしていないので、大丈夫だ」と思われるかもしれない。しかし、実は知らず知らずのうちに上向き筆記をしてしまうことがある。

上向き筆記というと、ベッドなどに寝転がってペンをまさしく上に向けて書く、というイメージがある。確かに、これは一番典型的な上向き筆記だ。しかし、それだけではない。

例えば、こんなことはないだろうか。机のない電車の中などで、メモ帳を立てて筆記をする。壁に貼ったカレンダーに書き込む。これもれっきとした上向き筆記なのだ。
 
ノートを斜めにしても、ペンは左のとおり水平になるが、ノートが垂直になれば、おのずとペン先は上を向く

ノートを斜めにしても、ペンは左のとおり水平になるが、ノートが垂直になれば、おのずとペン先は上を向く

壁に貼ったカレンダーに書きこもうとすれば、完全に上向き筆記となる

壁に貼ったカレンダーに書きこもうとすれば、完全に上向き筆記となる

要は、ペン先が完全に天井を向いているだけでなく、ペンが水平よりも上を向いてしまうのは、全て上向き筆記となってしまう。ちなみに、水平状態でも空気を取り込んでしまうことになる。
  
こうご説明すれば、はたと胸に手をあてて、自分のこれまでの人生を振り返って、思い当たる節が一つや二つはあるのではないだろうか。

ボールペンは、重力によってペン先側にインクを送り込んでいる。したがって、ペン先を上にして書くと、インクがペン先にいかないばかりか、入るべきではない空気を取り込んでしまうことになる。そして、ストローのフタをはずして水が流れ出るがごとく、インクが逆流を起こして、インク漏れという一大事につながってしまうのだ。

また、こんなこともある。

ボールペンのペン先をキャップをしないでむき出しにしたまま、鞄にポイッと放り込んでいたとする。鞄の中でボールペンは横になり、その上ペン先が出ているので、何かの拍子にペン先が触れて、いわゆる水平筆記の状態になってしまい、知らず知らずのうちにペン先から空気を取り込んでしまい、インク漏れにつながってしまうこともあるそうだ。この場合は、ペン先を露出したままにせず、しっかりとキャップをしたり、ノック式ならペン先を収納することで、防ぐことができる。
 

ポールペンのインク漏れを防ぐには……

ここまでお読みいただいて、いかにしてボールペンのインク漏れは起きるのかというメカニズムはお分かりいただけたと思う。

インク漏れは、上向き筆記によって起きるので、まずはペン先を上に向けて書かないということを心がけるのが一番だ。
 
上向き筆記ができるボールペン。上から、三菱鉛筆 「パワータンク」、フィッシャー 「スペースペン」、トンボ鉛筆 「XPA」

上向き筆記ができるボールペン。上から、三菱鉛筆 「パワータンク」、フィッシャー 「スペースペン」、トンボ鉛筆 「XPA」

しかし、人によっては、どうしても壁に貼った紙に書かねばならない、仕事柄メモを立てて書くことが多いという方もいらっしゃると思う。そんな方は、上向き筆記が可能なボールペンをお使いになることをオススメしたい。

これらは、通常のボールペンと違ってリフィルのインクタンクが完全に密閉されていて、さらにその中が加圧されているので、重力に頼らずともインクは出てくる。これなら、心置きなく上向き筆記を楽しむことができる。
 
リフィルの形状は違うが、 しっかりと密閉されている。

リフィルの形状は違うが、 しっかりと密閉されている。


ボールペンのインク漏れは洋服や鞄の中などを汚してしまい、私も経験があるのだが、ショックは結構大きい。今回ご紹介したインク漏れのメカニズムを押さえて、注意をすればかなりの確率で防げると思う。
 

しまった!インク漏れで服を汚してしまったときは

ボールペンを使っていて、うっかりYシャツの袖口などを汚してしまったという経験は誰しも一度はあるのではないだろうか。
 
インク落としの救世主「ステインデビルズ」

インク落としの救世主「ステインデビルズ」

そんな時の救世主になってくれるかもしれない、ボールペン汚れ落としをご紹介したい。それが、ドイツ生まれのシミ取り剤「ステインデビルズ」だ。フリクションなどの消せるタイプのボールペンインクや、ゲルインク、マーカーインクも落とすことのできる優れものである。(インクのタイプによっては汚れを完全に落としきることはできないものもあるので気をつけたい。)




日ごろよく使うボールペンなので、しまった! とならないために、うまく付き合っていきたいものだ。

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