突き詰めたものだけが得られる、自然な風格!
こちらはレディスのハンドバッグのサンプルです。縦横のバランス、持ち手の形状、錠前の大きさ…… すべてがあるべき位置に纏まっています。鞄自体に宿るこの「自然さ」が解っていただける女性に身に付けていただきたい。これと同じ仕様で価格は\336,000(税込み)。 |
これまでの写真で採り上げた作品からも皆さん既にお解りでしょうが、CLEMATISの鞄職人・小松直幸さんの作品には、
「妥協無く最後まで突き詰めたものだけが得られる、澄み渡った風格」
とでも申すべき、物静かな普遍性が備わっているのが大きな特徴です。最初のページでも少し触れましたが、革製品への嗜好がここ10年で明らかに少なくなっている紳士物の鞄は、その一方でブランドのロゴが本体にデカデカとプリントや型押しされていたり、バックルやファスナーのメッキがやたらと目立つ、言わば持ち主の真の個性を覆い隠してしまう下品なものばかりが目立ち、
「お手入れを怠らずに長く愛用したい!」
と思わせてくれるものが市場から急速に姿を消しつつあるのが実情です。そんな嘆かわしい状況の中に見る彼の作品は、その「風格」が決して人を寄せ付けないような威圧的なものではないせいか、まるで心地良いそよ風のように感じるのです。
作り込みの妥協の無さは鞄の至る所に見られますが、持ち手や錠前等の金具の存在感が特に絶妙です! 小松さんにお伺いしたところ、人間の顔に例えると眼鼻立ちを決定付けてしまうパーツなので、やはりこれらの製造や仕上げには特に気を遣うそうで、鞄全体で見た場合の「寸法上の美しさ」と「機能面での有用性」とのバランスをどう取るかが、一作毎に悩みどころとのこと。因みに持ち手は芯材にも必ず革を用いて、馴染みの良さと耐久性の双方を追及しています。また金具は925シルバーか真鍮で、いずれも年月と共に革の風合いに馴染んでゆくムクのものを用いるのがポリシー。前のページにもある通り、たとえオリジナルでない金具が選ばれても仕事は徹底していて、溶接したりメッキを剥がして研磨したり等を通じて、それに改良を必ず施します。
鞄本体の仕上げにも勿論手を抜いていません。例えば下の写真をご覧下さい。レディスのハンドバックの側面ですが、ある程度の厚みや硬度がある鞄用のボックスカーフを用いて、蝶番の周辺部をこれだけ丸く仕上げるのは、全て手縫いだからこそ可能な実は至難の業。これを何気なくやってくれるのですから、技術力の高さは言わずもがなですが、小松さんの場合は更に「経年変化」という感覚も持ち合わせてくれているのが、作品の見え方に一層優れた影響を与えています。つまり、長い間使い込まれることで劣化するのではなく、持ち主に次第に寄り添い完成時より更に美しい表情に変化してゆくことを念頭に鞄を仕立てているので、作りは完璧ながらそれが不必要な威圧感には結びつかないのです。
上のハンドバッグを側面から撮ってみました。蝶番の周辺をこれだけ丸く出っ張り無く仕上げられる技術力は、いい加減なブランドのものではもはや絶滅してしまっています。この「何気なさ」に気付いてくれる女性が、一人でも多くいてくれることを願うばかりです。 |
最後のページでは、高野さん、そして小松さんがお店を持ってからの心境の深化など!