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別格のツヤ・ハリ・うるおい! maestro松室真一郎(3ページ目)

「ビスポークシューシャイン」を標榜する松室真一郎氏が主宰するmaestro。彼が磨く靴には、他の誰とも違う輝きがあるだけでなく、革に「弾力性」や「潤い」もしっかり備えさせるのが大きな特徴です。

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

全身全霊込めて磨く、謙虚な姿勢!

磨く
松室氏が靴を磨く光景を、写真に収めました。まるで革の芯にまで靴クリームを「押し込む」かのようなハイパワー! アッパーの表面から音が出るほどですが、これこそ輝きが長続きする秘密の一つ!


maestroのアトリエを取材して、お客様向けに仕上がった靴や松室氏自身の靴を見せていただき、それに自分自身の靴も磨いてもらったわけですが、何と申せばいいのか、どれもがつまり「ここまで行けるのか……」的な、今まで見たことの無い光り方をし出すのに、正直驚きの色が隠せませんでした。通常では靴の革が持ち得ない、生命力のある弾力性や潤いを感じるのです。この秘訣を小生なりに考えてみると……

その一つ目はもちろん、用いているオリジナルレシピの靴クリームでしょう。詳細な中身は流石に企業秘密ですが、皮革だけでなく人体にも害を与えない材料を用いて、各色に対しソフト・ミディアム・ハードと硬度を常に3種類用意しているそうで、しかも季節や温度・湿度に応じてそれぞれを微調整しているとのこと。これらを革質や顧客のリクエストに応じて細かく使い分けてゆくことで、水分・油分の補給と光沢とのバランスを化学的に図っているので、たとえFull High Shineを施しても、履きジワでも光沢が割れ難いのだそうです。

二つ目は松室氏の磨きのテクニックです。特に磨き始めのタイミングでは、まるで指先で革を前に押すような感覚で全身に力を入れ靴クリームを入れ込んでゆくので、そこからククッと音がするほど。その光景はまるで、ハードシェイクを流儀とするバーテンダーさんの華麗なシェイカー捌きなのですが、彼曰く、その方が革に靴クリームの成分がしっかり染み込んで、澄んだ光沢が長続きするとのこと。実際、履いた後のお手入れはブラッシングではなく、洗濯後脱水機にかけた程度の湿り気を持つTシャツのような素材で汚れを拭う程度で十分で、これだけでも状況次第で光沢・栄養共に数ヶ月劣化しない場合もあるそうです。

最後の三つ目はやはり、松室氏の謙虚な姿勢でしょう。メニューそのものは前のページに挙げたものがベースですが、仕上がり具合に関しては事前に
「こういう要件に用いたいので……」とか、
「こういう感じのイメージで仕上げて欲しい!」
と積極的にリクエストして欲しいそうで、その方が色々と状況を考えながら、細かい工夫を織り交ぜつつ靴が磨けるのだそうです。そう、靴やスーツに誂えがあるように、靴磨きにも「ビスポークシューシャイン」があって然るべき、と彼は考えてくれているのです。これは洒落者にはたまらない!

「新品の靴の『素の光沢』も素晴らしいけど、履き込んだ靴だからこそ出せる、『持ち主の個性』が革の中から滲み出る輝きの深遠さに惹かれます」

こう話す松室氏のもとには、噂を聞きつけ大切な場面で履きたい靴や、お手入れに失敗してしまった靴などが、早速全国から舞い込んで来ています。自身の日頃のシューケアではどうしても納得が行かない方、「この靴は一体どこまで光らせることができるのか?」試されてみたい方、是非とも彼に靴を預けてみて下さい。前代未聞(未見か!)のその仕上がり具合で、預けた時間の長さは必ずや気にならなくなりますから。



【店データ】
maestro(マエストロ)
ホームページ:maestro
シューシャインの受け付けや配送先などは、こちらでご確認願います。

光沢の比較
向かって左(右足)がFull High Shine。右(左足)がSoft Shineです。どちらも次元の違う光沢なのですが、前者の方がより輝きの度合いの強いことが、フラッシュの当たり方の違いで解るかと思います。輝きの度合いについては、もちろん細かいリクエストにも応じてくれますよ!

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