男の靴・スニーカー/ドレスシューズ

新世代の「うねり」を感じる、SAIONの靴

日本の誂え靴界の若きエース、横山直人氏が率いるSAION。その妥協の無い作りこみは、内外の他のアトリエが追随できない領域になりつつあります。間もなく始まるパターンメードの情報も含め、その真髄をご紹介!

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

「誂え」の文化を、再創造します!

サイドレースアップ
美しいの一言に尽きる、SAIONのビスポークサンプルです。このサイドレースアップは主宰する横山 直人氏が一番思い入れのあるスタイルとのこと。一番最初にデザインしたスタイルも、これだったそうです。


かつての日本にも確かに存在した、靴を誂えるという文化。が、既製靴の氾濫と「高級品」=「著名なブランド品」という短絡的な思考の蔓延、さらには有能な職人の高齢化による引退なども重なり、それは残念ながらもはや風前の灯火です。

しかしここ数年、その閉塞的な状況に風穴を開けようと、若手の靴職人の頑張りがジワジワ目立ち始めているのも事実です。そこで今回は、そんな若手のエースといえる存在・横山直人氏が率いるSAION(サイオン)のアトリエを訪ね、日本の新たな誂え靴文化の底力を探ってみたいと思います。


2回の仮縫いは、妥協のなさの証!

2回目の仮縫い
2回目の仮縫いで、顧客が実際に約半月履いた「トライアルシューズ・その2」です。銀ペンでマークされた部分が要調整の箇所。この部分の木型を修正し、いよいよ「完成版」作製に取り掛かります。


SAIONとは、「彩音」という言葉の響きから名付けたブランド名。学生の頃からベースギターに慣れ親しんだ横山氏らしいものですが、彼は
「音楽の演奏でも靴作りでも、ベースが肝心なのは、全く同じ」
と言い切ります。すなわち靴作りにおいては、いかに足にフィットしたベース=木型を作れるか否かで、靴の良し悪しのかなりの部分が決定してしまうというわけです。

だからこそSAIONのフルビスポークでは、木型のチューニング=調整には余念がなく、それは仮縫いを2回行うという、内外ともに他の誂え靴のアトリエではなかなか踏み切れない製作ステップにも顕れています。発注から完成までの具体的な手順をみると、以下のような感じです。
  1. 顧客と共に靴のデザインを考える。
  2. フットプリントや触診なども活用し、顧客の足を採寸する。
  3. 1.2.をもとに木型をゼロから起こし、「トライアルシューズ・その1」を作製、履いてもらい具合をチェックする。
  4. 3.をもとに木型を修正し、実際に使用できる「トライアルシューズ・その2」を作製する。
  5. 今度は顧客に「トライアルシューズ・その2」を預け、日常生活の中で約半月履いてもらう。
  6. 「トライアルシューズ・その2」を返却してもらい、気になる点を報告してもらう。
  7. 6.をもとに木型を再修正し、「完成版の靴」を作製する。
  8. 製品が完成し、顧客に納品。



次のページでは、SAIONのビスポークの特徴を、さらに深くご紹介!
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