伝統と時代性が高次元に調和
グレンソンのサイドゴアブーツ・ダグナムです。全体的にはやや細長い現代的なシェイプですが、トウ周りの造形やデザインそのものは、このメーカーが生まれた時代の靴と実は瓜二つ! |
この秋冬は、メンズでもブーツの大旋風が起きているのをご存知の方も多いでしょう。第二次大戦以降は、ブーツはどちらかといえばカジュアルなイメージの靴になってしまいましたが、グレンソンが創業した19世紀後半には、決してそんな存在ではなかったんですよ。その片鱗が垣間見えるのが、このサイドゴアブーツ・「ダグナム(Dagenham)」です。ちなみにこのスペルで、こう読みます。むむむ英語は難しい……
この木型「107」も最初のページの「アクリントン」と同様ティム・リトル氏が監修したもので、トウスプリング(つま先の反り返り)をやや多めに設定しているのが特徴です。つま先は細身でロングノーズの、近年のトレンドであるスマートラウンドトウで、控えめなメダリオンが顔立ちを俄然引き締めます。ただ見た目は確かに現代的なのですが、長さはともかくトウ周りのフォルムは、実はグレンソンが創業した当時のブーツのもの、つまりヴィクトリアン期のものとそっくりなのです。アンチークフィニッシュが施された少しマットな質感の革が、それらを巧みに演出します。
サイドゴアブーツってビートルズのイメージが強い方も多いでしょうが、実は考え出されたのは1830年代で、当時のヴィクトリア女王の夫君・アルバート候が議会に登院する際にも履かれた、大変由緒正しいものです。ブーツ側面の上下の境界線をゴム部の最下線と併用したりそれに革の蛇腹をつけることで、「ゴム」を意識させないようにする意匠も、当時からあるんですよ。なのにとっても「旬」を感じさせてくれるのが、やはり前述したとおりブーツに強いグレンソンゆえの持ち味なのでしょう。その履き心地を大きく左右する甲の尾根や踵の線もしっかりと造形され、時間とノウハウを十二分に掛けて作られた製品であることを示しています。
この靴ならば、黒でもご覧のこげ茶(バーントパイン)でも、よほどうるさい職場でない限りビジネス用のダークスーツにも問題なく合わせられるはず。トラウザーズは少し細身のものを選んで、股下をやや短めに裾上げすると、靴の表情がより際立つのではないでしょうか? またカジュアルにももちろん応用可能です。例えばリーバイス501の66モデルのような気持ち細めのデニムなら、ブルーでもホワイトでも似合わないはず、ありません!
【グレンソン/サイドゴアブーツ・ロンドン(Dagenham)】
■色・素材 : バーントパイン。他に黒もあり(全てカーフ・スムースレザー)
■サイズ : 6 ハーフ~9 Fウィズ
■価格 : \70,350(税込み)
時代を見据え、伝統を築いてゆけるメーカー
「ダグナム」を側面から見た写真です。革の蛇腹で隠したサイドゴアの処理は、いかにも伝統がなせる業。この靴のアッパーの下半分は接ぎを踵にだけ入れた一枚革仕様。それでこの価格は、ズバリお買い得です! |
いかがでしょうか? 現代をしっかり見つめながらも、骨太なジョンブル魂は全く忘れていないグレンソンの靴。いずれの作品も、作りや革質、それに価格を含めたトータルバランスに大変秀でたものばかりで、その更なる向上に地道に努める姿勢は他のメーカーも見習うべきものがあります。長持ちする良い靴が欲しいけど、靴自体が目立ちすぎてしまうのはどうも……と仰る方、そう、そんなあなたに履いていただきたいブランドです。
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