男の靴・スニーカー/ドレスシューズ

普遍の美。ジェイソン・エイムズベリーの靴

イギリスの靴職人、ジェイソン・エイムズベリー氏が、2007年1月下旬に東京で受注会を催します。当ガイドサイトがリニューアルした際の最初の取材先でもある彼の靴の魅力を、改めて探ってみましょう。

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

あの彼が、また日本に来ます!

内羽根式のプレーントウ
ジェイソン・エイムズベリー氏が製作した、内羽根式のプレーントウ。奇をてらった部分が全くない、正に「履く人を引き立てる靴」です。


小生がこのガイドサイトを引き継いだ際、最初に取材したジェイソン・エイムズベリー(Jason AMESBURY)氏から、年明け早々メールが届きました。今月下旬に東京で受注会を行うとのこと。ならば今回は、その際書き切れなかったことも含めて、彼のビスポークシューズ=誂え靴の特徴について、改めてお話してみましょう。


採寸した本人が木型も作るのは、実は稀

ソール面
ソール側から眺めてみました。思いっきり絞られた土踏まず部と、内側に振られたつま先が履き心地の良さを保障するかのようです。ジェイソン氏本人が関わる工程が多いからこそ、可能になるシェイプです。


最盛期に比べ数がめっきり少なくなってしまったとは言え、ロンドンは世界的に著名な誂え靴の店舗が未だに集中する都市です。王室御用達のジョン・ロブ(日本でも既製靴が入手可能なジョン・ロブは、ここのかつてのパリ支店がエルメスに吸収されたもので、現在では別法人です)をはじめ、彫刻のノミの先端のようなつま先が美しいジョージ・クレヴァリー、迫力のあるシェイプが魅力のフォスター&サン、それに2006年秋に新たに参入し当ガイドサイトでも速報をお届けしたガジアーノ&ガーリングなど、紳士靴に興味がある方にとっては正に憧れの店ばかり。ある種の最終目的地の感があります。

ジェイソン・エイムズベリー氏のアトリエは、その中でも規模だけで見れば一番小さな部類に入るでしょう。ただ、「規模の小ささ」が必ずしも不利になるとは限らないのが、このような誂えの世界の常。規模が大きくないことは、すなはち、顧客と直接面識のある職人がより多くの製作工程に直接関われることを意味するからです。

誂えの靴を作る工程は、大きく分けて以下のようになります。
  1. 採寸:顧客の要望を聴き、足を計測し履きグセ等をチェックする。
  2. ラストメイキング:1をもとに、その顧客固有の木型(ラスト)を作成する。
  3. クリッキング:2をもとに、アッパーに用いる革に製図し、顧客の要望するスタイルを落とし込んだ上で、その革を裁断する。
  4. クロージング:アッパーの革を縫製し、靴の「上屋根」を完成させる。
  5. ボトムメイキング:アッパーに木型をかぶせた状態で、ソールやヒールを縫い付ける。
  6. 仕上げ:靴を磨いたり、中敷を作成したりなど。
ジェイソン氏の場合、上記の4と5は超一流の職人に他のロンドンの誂え靴店と同様に外注するのですが、1から3までを彼自身で行うのが大きな特徴です。特に1と2を同一人物が行える点こそ、実は「規模の小ささ」の大きなメリットなのです。

採寸した「数値」や「コメント」だけでは表せない足特有の情報や顧客の嗜好も木型に忠実に反映させるためには、実際に顧客と直接話しをし、足を見て測ってそして触れた人間がそれを削るのがベストなのは言うまでもありません。誂え靴について語られる際、この点は案外見落とされがちなのですが、靴の出来を左右する大変重要な要素でしょう。

次のページは「見栄えと両立させる、高度な『ネジレ』」などです。
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