お手入れにスポットをあてます!
初めは面倒だと思うお手入れも、慣れると愉しくなるものです |
このシリーズでは、靴に興味のある方なら誰しも関心を持って欲しい、なのに系統だった解説が案外なされておらず、靴作りのプロでも知らないケースが結構多い「靴のケア・メンテナンス」に焦点をあてます。その方法や便利な商品などを「メンズシューズ基礎徹底講座」シリーズと同様、ほぼ1回/月の割合でお話していこうと思います。
「お手入れなんて面倒で……」「何をどう手入れするのが正解なのか、実は確証が持てていません……」という方、是非とも毎回お読みいただければと思います。靴の価格に関わらず、必ず靴の寿命を延ばすのに役に立たせますから。
第一回ですのでウォーミングアップとして、ケアやメンテナンスに入る「一つ手前」の、とても大切なことを、いくつかお話しましょう。僅かな配慮ですが、これをする・しないで、靴の寿命は本当に激変しますので。
必ず靴ベラを使って履こう
これは真鍮でできた靴ベラです。プラスチック製が主流ですが、骨や角でできたものもあります |
「靴の中に足を入れやすくするためじゃないの?」勿論それも大正解! ですが、もう一つ重要な使命があります。それは、履く際に靴を「壊さない」ためです。これのない場所で靴を履き直さざるを得なくなった時、思わず靴のかかと部をグニャッと踏んづけてしまった経験、多くの方があるでしょう。それ、靴には大変なダメージになるのです。
実は大抵の靴のかかと部には、アッパー(表の素材)とライニング(裏地)との間に、「月型」と呼ばれる芯地がその周囲を取り巻くように入っていて、足の固定のみならず靴の形の保持にも一役買っています。したがってここが潰されてしまうと、足が靴の中でしっかりホールドされなくなるので履き心地が悪くなり、結果的に他のパーツの不要な損傷も早まり、靴全体の寿命が縮んでしまうのです。
そう、かかと部が潰れて単に靴の見栄えが悪くなるばかりではないのです。カジュアルシューズではここが踏める構造のものが最近登場してはいるものの、普通の靴でのその種の履き方は正にお金の無駄遣い。理性のある大人は、ちゃんと靴ベラを使って履きましょう。
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