僕が最も好きなレーベルの一つ、エンツォ・ボナフェの別注モデルを発見しました。それは、僕がここ数シーズン推し続けている、タッセル。かつて紳士靴の代表選手として一世を風靡し、しかしそれゆえ“オヤジ靴”としてある頃から影を潜めていた靴種だ。
当時を知らない世代に新鮮に映ると思ったんですよ――ウエア系のデザイナーと話をしていて、よく聞くコメントだ。例えば、紺ブレ。彼らはそうした懐かしいアイテムに、シルエットをシャープに体にフィットするようつくり上げることで、今日性を与える。
ファッションの基本は“繰り返し”で、フィーチャーするアイテムのタイミングを計りつつ、その時々のエッセンスをどう取り込むかが、デザイナーの腕の見せ所となる。
そーゆー意味では、イタリア系がひと段落し、アメリカなるモノが注目を集める今、タッセルはいい加減、注目を集めていいはずだと読んでいた。なぜならタッセルは、1950年代にハリウッドの俳優がつくらせたことから広まったルーツをもつからだ。
だから、今回発見したエンツォ・ボナフェのタッセルローファーにはしびれました。やや長めのノーズ、というだけで十分今日性を獲得しているのだけど、全身を覆うのがスエードというのもいい。あるいはスムースを選んでいれば、学校の指定靴のような印象が生まれてしまったかも知れない。スエードのその靴は、まさに上質な、大人のための靴。
手掛けたのは、スタジオ・サンパティックというインポーターの代表、高橋さん。「アデル クラーク」や「ドゥッチオ デル デュッカ」など、レディスではヒジョーに有名なレーベルを展開している人だ。展示会でたまにお見かけするのだけど、大御所ってどうにも緊張してしまい、僕は気の合うプレスの最勝さんとばかり話している。今度は勇気をもって、話し掛けてみよう。
で、紹介する二足、どちらかを選べといわれれば、う~む、これは迷う。トレンドカラーであり、足元に潔いシャープ感を与えてくれる白が本命だけど、トップライン(履き口)に三色の革紐が編み込まれた茶も、汎用性があるのに遊び心があって捨てがたい。
●価格:いずれも\72,450
●問い合わせ:スタジオ・サンパティックTEL.03-3499-5054
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。