宮城興業はアローズやシップスなどセレクトショップからアツい視線が注がれている靴メーカーだ。それもそのはず、宮城には優れた技術とそれに奢らない柔軟性があるのです。
靴づくりの要となる底付けはグッドイヤーからマッケイ、セメント、ステッチダウン、最近流行のブラック・ラピッドまで何でもござれ。工場をのぞいてみると、いまだクリッキング(裁断)には手裁ちが残っているし、釣り込みでは二度釣りが行われている。釣り込みが“手”に限るというのは、木型のフォルムを忠実に再現してくれるということなんだけど、機械でも二度に分けて釣り込めば、下手な手釣りよりよっぽどきれいなのだ。
そして、メーカーの宿命であるミニマム・ロット(最低発注量)がさほど大きくない。よってまだ売り場は大してもっていないデザイナーにとっても非常にありがたい存在。これはし好が多様化するニーズに合わせようということなのだ。社長を務める高橋さんは「デザイナーからの依頼は量こそ多くはありませんが、優れた感性をもっており、我々の靴づくりに反映させることができる。それに少ロット対応は時代の流れ。ゆくゆくはその方向性を体現したオリジナルを開発したいと思っています」
1941年に創業した宮城興業は軍需、つまり軍靴の製造で発展した。伝統にあぐらをかくことなく、次を見つめる姿勢。産地の海外移転が進み、国内メーカーが続々消えていく中で、宮城は日本が誇るべき靴メーカーなのでした。
もひとつ、おまけの情報として、ここんちは靴づくりが学びたいって若者を研修生として迎え入れる受け入れ態勢があります。さらにユーザーの工場見学も大歓迎だそーです。
…と仕事の話はここまで。こんなこと書くと宮城の社長に怒られそうだけど、今回僕にとってのメーン・イベントは温泉。暮れからろくに休むことなくテンパリっぱなしだった僕を哀れに思った盟友、ボブ菊池が「宮城行くけどついてくるか」と誘ってくれたのでした。宮城興業があるのは山形は南陽市。そう、かの有名な赤湯温泉のど真ん中。この記事は貧乏性の僕が思わずカメラバッグを下げて行っただけのことなのです。
ここでしか採れないセレタス(レタスと白菜の掛け合わせ)、馬刺し、米沢牛のスジ煮込みナドナドを肴に骨酒とマッコリで一杯呑る。で、仕上げは露天風呂。しかもただの露天風呂じゃない。空から粉雪舞ってますから。昼は昼でこの土地名物の源三そばと赤湯ラーメンでまたまた一杯。帰り際に聞いたら、春は山菜のてんぷらが絶品だそーです。AAJの担当Nさん。春にまた、宮城を紹介するかも知れません…。
●宮城興業
山形県南陽市宮内2200
tel.0238-47-3155
e-mail.tuff@jan.ne.jp
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