エアコンのガスはなぜ漏れる?
暑い日にエアコンの効きが悪くなる、そんな地獄を味わったことがある人なら一刻も早く修理をしたいと思うはずです |
実はエアコン自体の仕組みは、クルマ用も家庭用もほとんど同じようなものです。コンプレッサーの駆動方式やガスの種類などに違いは見られますが、基本的には同じメカニズムで冷風を発生するクーラー機能を作動します。その違いとは、実は使用する環境の違いにあります。
クルマでは走行中、常に様々な振動が発生します。そうした振動を吸収するため、エアコンの各パーツを繋ぐホースにはゴム製の柔軟な配管が部分的に使用されています。しかし、その接続部はというと、メネジ・オネジが切られた金属製のジョイント(フィッティング)によって繋がれているだけなのです。
もちろん、内部の高圧なガスをシールするため、フィッティング部にはゴム製のOリングも併用されていますが、長い間振動にさらされていると、徐々にこの接続部からガスが漏れてしまうのです。家庭用エアコンでも同じような配管接続方法を用いますが、基本的には外的な振動などにさらされることはないため、クルマ用エアコンと比べるとガス漏れというトラブルは圧倒的に少ないのです。
またゴム製のホースからは、特に穴などが開いていなくとも、非常に粒子の細かいエアコンガスの分子が徐々に漏れ出すため、特にガス漏れの形跡が見られなくとも、クルマ用エアコンのガスは徐々に漏れてしまうようです。
修理せずにとりあえずガスの補充してませんか?
エアコンガスが漏れた後には、必ずオイルの汚れが付いています。これがコンプレッサーオイルなのです |
問題なのは、ガスの補充を定期的に繰り返しているような場合です。実はエアコンのサイクル内にはガスと一緒にコンプレッサー内部を潤滑するためのオイルが混ざって、循環しています。そのため、ガスが漏れるときにはこのコンプレッサーオイルも合わせて漏れ出てしまうのです。それに気づかずにエアコンガスだけを補充していると、いつの間にかコンプレッサーオイルの量が極端に少なくなってしまう、という事態になってしまうのです。
エアコン・コンプレッサーの構造は、いくつかのタイプがあるのですが、代表的なものでは丸いコンプレッサーの内部に小さなピストンがいくつか仕込まれており、回転するローターの動きに合わせて、これらのピストンが上下し、ガスを圧縮します。実物を見ないと、ちょっと分かりにくいかと思いますが、エンジン内部でピストンが作動しているのを思い浮かべていただければいいかと思います。
コンプレッサー内のピストン、シリンダーはともに金属製ですので、エンジン同様その摺動部はオイルによって潤滑されているのです。ではそのオイル量が減ってしまったら……、最悪の場合はエンジン同様、焼き付いて止まってしまいます。そうなるとコンプレッサーの交換はもちろん、場合によってはエアコンサイクル内の洗浄など、面倒な修理が必要になってくるのです。
では、そんな最悪の事態を避けるには、どうすればいいのでしょうか?
ガスチャージの際はオイルも一緒に!
ひと昔前までは点検用の窓を見て、ガス量をチェックする方法もありましたが、それはあくまでも目安に過ぎません |
その際、注意したいのが、オイルの量にも適正量があるということです。オイル量は少なくても問題ですが、多すぎてもエアコンの効きを悪くさせてしまうなど、ちょっと問題があるのです。サイクル内を循環するオイル量を測ることなどできなそうに思えますが、ちょっとしたフィルター状の機器で一定量のガスに混入するオイル量から、システム全体のオイル量を測定する方法があります。できればそうしたチェックをした上で、追加するオイル量も判断したいものです。
また追加するガスの量も、実は最も重要なポイントです。ガスの量はエアコンサイクルの高圧部と低圧部、それぞれの圧を測定して決定する必要があります。とりあえずガスを入れてみて、入るだけ入れる、といったアバウトな注入作業は避けたいものです。作業を依頼するときには、マニホールドゲージと呼ばれるエアコンガス専用の圧力計測機を持った工場に依頼することをお勧めします。
ちなみにエアコン修理を専門としている業者というのもおりまして、一般的には電装屋さんと呼ばれています。その名の通り、自動車の電気部品の修理などを専門に手掛ける業者で、エアコンの修理も基本的にはその範疇に入ります。ディーラーでは敷居が高く、ガソリンスタンドではちょっと……、という人は、そうした専門業者に依頼するという方法もあります。
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