ブレーキペダルを踏み込むことで作動するフットブレーキには、ペダルを踏んだ力を油圧に変換してブレーキシステムまで伝達する「油圧式」が採用されている。密閉した容器の中で静止している液体の一部に加えられた圧力は、その液体の全ての点に、その大きさを変えることなく伝えられるという「パスカルの原理」によって、4輪に設けられたブレーキシステムを均等に作動させることができるからだ。
その油圧を発生させる働きをしているのが「マスターシリンダー」と呼ばれる部分で、運転席前方の鍋をひっくり返したようなパーツ(マスターバック/倍力装置)に取り付けらている。そして、その上部にはブレーキフルードを溜めておく「リザーバータンク」が設けられており、目視でフルード量をチェックできるようになっているのだ。
また、ブレーキフルードは液漏れなどの不具合がないかぎり極端に減少することはないが、ブレーキパッドが摩耗すると、その摩耗量に応じてブレーキピストンが移動し、リザーバータンク内の液面が下がってくる。つまり、フルード量を点検すればブレーキパッドの減り具合が推測することも可能なわけ。これらをチェックするだけならものの数分。自身の安全のために定期的な点検を心がけたい。
●ブレーキフルードの交換
1.液量をチェックする
ブレーキフルードのリザーバータンクは運転席前方にセットされている。キャップ上に「ブレーキ液」などの表記がされているため注意すれば判別できる。そのタンクの側面には上限と下限を表すMAX/MINラインが表記されており、そのライン間に液面があれば液量はOKだ。
2.フルードの色も確認する
ただし、量がOKでも茶色く変色(新品のときは透明)していたら要注意!湿気を吸って劣化している証拠なので、なるべく早く交換したい。
3.MINラインまで下がっていたら要注意!
なお、液面はブレーキパッドの減りに応じて下がってくる。そして、MINラインまで下がっていたときはブレーキパッドがかなり磨耗していると推測することができる。このため、MINライン前後まで減っていたときは念のためパッドの残量を確認しておきたい。
4.マスターシリンダーの取り付け部に注目!
また、マスターシリンダーは構造上圧力漏れを生じるとマスターバックとの接続面にブレーキフルードが漏れ出してくる。ブレーキフルードが塗装に付着すると塗料が剥がれるので、液量が極端に減っていたときは、その周辺がフルードで濡れていたり塗装が剥がれていないかもチェックしておきたい。
●ブレーキパッドの点検
1.ジャッキアップしてタイヤを取り外す
ブレーキパッドの残量は多少手がかかるものの自分で行なうことができる。まず、ジャッキアップしてタイヤを取り外す。取り外したタイヤは万が一の安全策(ジャッキアップしたクルマは不安定で、ちょっとした振動でジャッキが外れることがある。そのような不測の事態の備え)として直近のボディ下に入れておく。
2.キャリパーの点検孔を清掃する
ディスクローターに覆いかぶさる形にセットされているブレーキャリパーの上面に注目。一般的なフローティングタイプ(片面のみにピストンがあり、ボディが左右に動くタイプ)の場合、ブレーキパッドの点検孔が設けられている。対抗ピストンならブレーキパッドが直視できるはずだ(カバーがセットされていることもある)。ただし、摩耗カスが付着していると残量をチェックしにくいためブレーキパッドの点検孔からブレーキクリーナーをスプレーして、ブレーキパッド回りの汚れを落としてやる。なお、ブレーキクリーナーは揮発性の脱脂洗浄溶剤を主成分としたスプレー式のブレーキ専用洗浄剤でカー用品店で手に入る。
3.点検孔から覗き見て残量を確認する
点検孔から内部を覗き見るとライニング部分(摩耗する部分)とディスクローターの接触面の一部を確認することができる。サビている面がディスクローターで、そこに接している側(右の写真の矢印の間)の厚みをチェックする。新品時の厚みは約10mmで摩耗限界は2mm前後だが、5mmを切っていたら交換を検討したい。
関連サイト
ブレーキのメカニズム&交換法(All About)
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