文章 : 高山則政(All About Japan「カーメンテナンス」旧ガイド)
年末年始、帰省やレジャーなどクルマで出かけることが多くなります。楽しいドライブが、トラブルで台無しにならないよう、冬ならではのメンテポイントを挙げてみました。特に降雪地域や寒冷地に出かける人は注意しましょう。
オイル
私たち人間でも冬は動きが鈍くなりがちですが、クルマにも同じようなことが言えます。エンジンの中に入っているオイルも、温度の低下によって粘度が大きくなってくる傾向にあります。このため、朝一番のスタートではセルモーターの回転が重くなったり、エンジンの抵抗になったりしてしまいます。
店頭で入手できるオイルのほとんどは、マルチグレードですから一年中使用できるとされていますが、その中でも柔らかいタイプをチョイスした方が有利と思われます。
固いオイルは、スタート時の抵抗が大きく、エンジンが始動してからもパワーロスになるほか、細い通路に入りにくいため、最悪の場合は焼き付きの可能性もあります。例えば、ターボ車のターボチャージャーの軸受け部は、1~2mm程度の細いオイル通路がありますが、このような場所へのオイル周りが遅くなってしまいます。加えて、エンジン始動後のファーストアイドルは回転数が高いので、ターボの回転を早くします。その結果、潤滑不良を起こしやすくなるのです。一見、固いオイルほど潤滑性が高いように思いますが、ダメージを与える可能性もあるのです。
では、どんなオイルが柔らかいのかというと、粘度表示でWの付く数字の小さい方が低温時も柔らかさを保っています。標準的な粘度が10W-30や10W-40とすれば、5W-20や5W-30はかなりサラサラしたオイルということになります。クルマの取扱説明書やボンネット裏のラベルに書いてある範囲で、柔らかいオイルにしてみるのも良いでしょう(初めから工場充填されている場合もあります)。
ただし、設計の古いクルマで5W-20などを使用すると、エンジンノイズが大きくなる場合もあります。これは、油膜のクッション効果が少なくなるためだと思われます。これによって壊れるということは少ないのですが、カチャカチャうるさいのは気分的にイヤなものです。この場合、10W-30などの標準的な粘度を使うのが良いでしょう。ただし、個人的な経験では、低温側が5Wと低くても5W-50のようなワイドレンジタイプなら、ノイズ低減効果は10W-30より上でした(ただし高価)。
とにかく、15W-40とか20W-50という粘度は避けるべきでしょう。ディスカウント店で、このような粘度の輸入オイルが出回っていることもありますが、いくら安くても使うべきではありません。旧車ならともかく、一般車には夏場でも不要な粘度なのですから。
バッテリー
一年を通じて、トラブルのトップにランクされるパーツです。冬場は温度の低下によって化学反応が鈍くなるため、バッテリーの実質的な容量も低下するとされています。バッテリーが元気なうちは、容量低下しても表には現れませんが、元の性能が低下していると急激にバッテリー上がりを招くことがあります。朝のスタートが弱々しいという場合は、早めにバッテリーの点検や交換を行っておきましょう。
また、渋滞にはまった場合、ブレーキを踏みっぱなしにしているとバッテリーの充電が間に合わなくなることがあります。走行中はオルタネーター(充電器)も回っているので何とかなりますが、一旦エンジンを止めてしまうと、次のスタートができなくなる可能性があります。こんな時は、サイドブレーキを使って止まったり、エアコンやデフォッガーの使用を最小限にしたりするなど、電気の使いすぎに注意しましょう。