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フォルクスワーゲンから登場したトゥーランは正しく、そんなミニバンなのである。全幅こそ1795mmもあるが、全長4390mmでしかない。小振りなミドルセダン程度の平面寸法で、このくらいのサイズならば込み入った街中でも、それほど大仰な思いもしないで乗り回せる。
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2タイプ設定された搭載エンジンはともにガソリン直噴を採用。排ガス規制の★は、申請していないので無し。輸入車のほとんどが★獲得のための審査請求を行っていないのだが、VWもそれに倣っている。もっとも、エミッションの問題よりも、審査コストや日本と海外のエミッション規制の案配の違いに起因しているようで、VWにしてみれば胸を張れるだけのエミッション規制を達成しているとのこと。ちょいと古い例えではあるが、一昔前の日本酒等級付けにおける無審査一級酒を思い起こされる。
ガソリン直噴ということで、活発なドライブフィールを期待したのだが、意外やかなりおとなしいパワーフィールだ。1.6L車は116ps/15.8kg-mのパワースペックで、1530kgの車重にはちょっと荷が勝ちすぎているのだが、実際に運転すると数値よりも非力感を覚えてしまう。
細かなスロットルワークに対する反応は穏やかである。ガソリン直噴らしくない。しかし、深く踏み込み、長々と加速させていく時には、快速というほどではないにしてもあまり車重を意識させない伸びやかな印象があった。どうも、意図的に機敏な反応を抑えているようだ。
ゆったりとしてドライブフィールを求めたというよりは、無駄な加減速を控えることで実燃費の向上を図ったと思われる。ちょい乗りで印象深い切れのよさよりも、じっくりと生活に溶け込んだ実利を求めたのだろう。
1.6Lでは物足りないから狙いは2Lかな、と思っても基本的なエンジン特性は同じようなもので、最高出力が116psから150psへ、最大トルクが15.8kg-mから20.4kg-mへと増加した分だけ、きっちりと力強さを増しただけ。真面目で実用的で、燃費運転に神経質にならなくても、クルマのほうで伸びるような走り方をしてくれる。地力があるから穏やかなパワーフィールでも非力感はないし、気楽に運転できてしまう。
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1.6L車はソフトな味付け。市街地走行でも比較的長いストロークを使いながら、ゆったりと車体を御している。車軸周りの緩みを感じさせないストロークながら角のある衝撃や上下動をうまく抑制。しっとりと優しい乗り味である。
一方、2L車は同じ条件で走っていても使用ストローク量が1.6L車よりも短い。感覚的には2/3くらいに短縮されているようだ。路面の細かな凹凸で神経質に振動しないのは1.6L車と同じだが、引き締められたストロークで高速ツアラーらしい乗り心地になっている。
運転感覚も1.6L車は低中速域での軽快感が身上。操舵感も軽く、交差点や曲がり角で車体サイズや重量を意識しないで操れる。軽快感を出しながらグニャグニャした頼りなさがないのがなかなかいい感じである。
2L車はロールやピッチ変化の逃げが少なくなった分、操舵感は重くなる。「ひらり」ではなく、「ぐいぐい」と曲がっていくタイプ。ボディ周りの挙動は小さく抑えられているのだが、ゆったりとした動きなので乗員を揺するような神経質さもない。
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両車も回頭後、早い時期に後輪に荷重が載ってしまい、回り込みを強調したハンドリングになっていたのが少々気になった。前輪に荷重を載せたまま、あるいは後輪荷重の変化を少なくした方が、もっとすっきりと落ち着きのある乗り味になったと思われる。もっとも、ミドルサイズのミニバンでの相対比較なら、トゥーランほどしっとりと乗り心地と安心感のある走りを持ったモデルはない。品のよく優しい走りに生活に根付いたVWの真面目さを感じてしまった。