おいしく煮るコツ

味見
調味料を入れてひと煮立ちしたら、煮汁の味見をしましょう
煮物を上手に作るには、下ごしらえ、水加減、火加減、味つけが大事ですが、 一番は作ってみること。作らないことには何も始まりません。 まずは、ネットや料理本の中から、味が想像できる料理を選び出し、そのレシピ通りに作り始めます。そして、お母さんの味、おばあちゃんの味、あるいはお父さんの味、お店で食べた味を思い浮かべて下さい。

おいしかった「あの味」に近づけるためには、味見が大事です。調味料を入れてひと煮立ちしたら、必ず煮汁の味見をしてください。薄味ながら調和のとれた味になっていればOKです。薄いながらも「あ、おいしい」と思うことができたなら、あとは、さっと煮てそのまま冷まして煮含める(含め煮、煮びたし)か、汁がなくなるまで煮詰めれば(煮しめ、煮つけ)いいのです。 仕上げのときも味見して、先に味見した味との違いを比べることも大事です。 「あの味がこうなるのか」と、きっと次回に生かせます。失敗を恐れずチャレンジしてください。


まずは煮びたしから始めよう

ひや汁
米沢の郷土料理「冷や汁」は究極の煮びたしといえそう
手始めの煮物として「小松菜の煮びたし」がおすすめです。 小松菜を、旨味の出る材料(ちりめんじゃこ、煮干し、帆立、油揚げなど)と一緒に煮汁に入れて5分ほど煮たら、そのまま冷まして味を含ませます。材料から旨味が出るので、ダシは要りません。出来上がったあとで、なんとなく物足りないようであれば、器に盛りつけてから削り節をのせればいいだけです。

小松菜はアクが少ないので、下ゆでせずに煮ても大丈夫です。独特の青くささを取り除きたいなら、さっと下ゆでしてから煮ます。小松菜を白菜に替えてもいいでしょう。残った煮汁は取っておいて、濃い味の煮物(煮しめや煮つけ)に使いまわします。


材料や分量に合った鍋を使う

料理に見合った鍋を使用
鍋に隙間なく並べて煮込めば、巻き終りを止めなくても大丈夫「ロールキャベツのクリーム煮」
作りたい煮物の、材料や分量にあった大きさの鍋を選びましょう。大きすぎる鍋は、材料が踊って煮崩れしやすく、煮汁も無駄になりがちです。小さすぎる鍋では、味が全体にまわりません。

調味料を入れる順番

南瓜の煮物
煮崩れしやすい南瓜は、最初に1つまみの塩を加えて煮るとよい
調味料を入れる順番といえば「料理のサシスセソ」が有名です。サ(砂糖)、シ(塩)、ス(酢)、セ(醤油)、ソ(味噌)。

調味料が食品の内部に早くはいる順序は、1.塩(醤油)、2.砂糖なので、はいり難い砂糖から入れることになります。次は塩、香気のある醤油です。味噌や酢は後から入れて、あまり煮込まないのが一般的とされています。

「サシスセソ」には、そんなにこだわる必要はありません。 最初から酢を入れて煮込む料理もあれば、魚や豆腐のように、調味料を全部合わせて煮立ててから材料を入れることもあるのですから。煮崩れしやすいかぼちゃは、あらかじめ小量の塩を入れて煮ると煮崩れが抑えられます。


みりんはいつ入れる? お酒は?

ツナと根菜の煮物
みりんを、隠し味と照り出しに使った「ツナと根菜の煮物」
みりんには素材をキュッと引き締める作用があり、酒には素材を柔らかくする働きがあります。例えば以下のように使い分けます。

・角煮……柔らかく仕上げたいので、みりんではなく酒を使います。仕上げにみりんを少し加えて煮からめ、照りよく仕上げます。

・肉や魚……酒を最初に入れて煮ます。

・芋や南瓜……みりんよりも砂糖を使って甘味をつけた方が、しっかりした味になります。


アクとりの必要性と方法

アク取り
鍋肌にアクを集めてすくいとる
本調理前の下ごしらえとして「アク抜き」をします。これは主に野菜に施します。 調理中に、浮き上がった不味成分を取り除くのが「アクとり」です。このアクは肉や魚介類を煮た時に多く出ます。見た目、味、舌ざわりの面から見ても、取り除いたほうがいいです。

アクをすくうときには、一緒においしい煮汁を捨ててしまわないよう、気をつけてください。アクの取り方は、散らばったアクを鍋の縁に集め、玉じゃくしかアク取り用網じゃくしですくいとり、ボウルにためた水にしゃくしごと入れて、すすいで落とします。 アク取りシートは手軽で便利なものですが、煮汁も吸い取ってしまうのが、ちょっと残念です。


おとし蓋の使い方と着せ蓋

落し蓋と着せ蓋
落し蓋は木製のものが一般的。写真のものは軽いアルミ製
材料に煮汁が行き渡るように、また煮崩れを防ぐために、鍋よりひとまわり小さい蓋を材料の上に直接のせることを「落し蓋をする」と言います。特に、煮魚を作るときには欠かせません。魚の皮がはがれないように、蓋を水でぬらしてからのせます。柔らかくて煮崩れしやすいものを煮るときは、紙蓋やアルミホイルを落し蓋代わりにするといいです。

落とし蓋では水分が早く蒸発しすぎて、材料に十分火が通らないことがあります。 そんなときや、ふっくら仕上げたいときには、落し蓋をした上に普通の蓋をします。それを着せ蓋といいます。着せ蓋は料理の状況によって、すき間を開けたり、閉じたり、外して煮汁を蒸発させたりします。


魚の煮方

煮魚
鯛のアラの旨味が大根にしみ込んだ「大根と鯛のアラ煮」
魚は煮汁が沸騰してから入れて、皮がつかないように水で濡らした落とし蓋をして、中火~強火で煮ます。途中、お玉で煮汁をまんべんなく回しかけてあげると、全体にむらなく味がつきます。 魚を1匹まま煮つけるときは、浅くて底の広い鍋を使います。鰈を煮る場合は、尾と鍋の間に薄切り生姜をはさむと、鍋に尾が張りつきません。筒切りの魚を煮る場合は、魚がきっちり並ぶ鍋を使うと、煮崩れせず、調味料も必要最小限に抑えられます。

味付けは魚の種類によって変えます。白身の切り身魚は、甘みを控えた薄味であっさりと煮ます。あじやいわしのような青魚は、独特のくせがあるので、生姜をきかせてこってりと煮ます。梅干しを入れると、酸味が加わってすっきりとした味になりま す。
※魚でも、含め煮、佃煮などはゆっくりとろ火で煮あげる


日本料理の煮物の種類

・煮汁を多くして、薄味で含ませたもの……含め煮・煮びたし・白煮・おろし煮
・煮汁を少なくして、煮含めるもの……うま煮・煮しめ・照り煮・煮つけ
・煮る前に一度火を通してから煮るもの……炒め煮・揚げ煮・煮びたし


含め煮

ふくめ煮
煮汁にとろみをつけて上からかけた「高野豆腐の含め煮」
長く煮ると色が悪くなるものや、形が崩れるものの煮方。薄味をつけたたっぷりの煮汁でゆっくり煮たあと、その煮汁の中に数時間つけておいて味を含ませる。「含ませ煮」ともいう。「高野豆腐の含め煮」「麩の含め煮」などがある。

煮しめ

煮しめ重
おせち料理にかかせない煮しめ
正月のお節料理やお弁当に向いてる煮物。味付けを濃くし、煮汁が少なくなるまで煮しめて日持ちさせる煮方。一般的なものが「野菜の煮しめ」で、新潟や福井の地方には、材料を小さく切って煮る「小煮しめ」という郷土料理がある。


煮びたし

煮浸し
下ゆでした大根を薄味でさっと煮て冷ました「大根の煮びたし」
下ゆでや素焼きにした野菜を、薄味の煮汁でさっと煮て、そのまま冷まして味を含ませたもの。「小松菜の煮びたし」「水菜の煮びたし」「ナスの煮びたし」などがある。

煮つけ

煮つけ
番茶に酒、砂糖、みりん、酢で味付けした煮汁で煮た「鮎の煮つけ」
魚類の一般的な煮方。濃い目の味付けをした少なめの煮汁で煮る。煮しめほど煮込まない。魚の中心までは味をしみ込ませず、煮汁をつけながら食べる。「赤魚の煮つけ」「鰈の煮つけ」などがある。

当座煮

当座煮
醤油と酒とみりん少々だけで煮た「なめこの当座煮」
醤油と酒で調味した辛めの味の煮物。酒の肴やお弁当のおかずに向く。「茸の当座煮」「ふきの当座煮」「まぐろの当座煮」 などがある。

照り煮

てり煮
すりおろした長芋を詰めて照り煮にした「とろろ餅入り油揚げの照り煮」
みりんを使って照りよく煮上げた煮物。「つや煮」ともいう。 「にんじんの照り煮」「田作り照り煮」などがある。

煮ころがし

煮っ転がし
お袋の味の定番「じゃがいもの煮ころがし」
少なめの煮汁の中で、材料が焦げ付かないように転がしながら煮たもの。「煮っころがし」ともいう。よく知られているものに「じゃがいもの煮ころがし」「里芋の煮ころがし」がある。

炒め煮

炒め煮
塩茹でインゲンを散らした「いり鶏」
材料を油で炒めてから煮たもの。うまみが逃げず、油が入ることでコクが加わる。インゲンや絹さやなどの最後に散らす青物野菜は、口直しの役目もあるので、サッと塩茹でにして、味をつけないのが普通。「いり鶏」「キンピラ」などがある。

甘辛煮

甘辛煮
手羽元の旨味を大根にうつして煮上げた「手羽元と大根の甘辛煮」
砂糖と醤油で甘辛く煮つけたもので、煮汁がなくなるまで煮て、こってり仕上げる。「豚レバーの甘辛煮」「さつま芋と豚肉の甘辛煮」 などがある。

うま煮

甘煮
中国料理の煮物は、材料を一度炒めたり、揚げたりしてから煮込むのが特徴「キクラゲの中華うま煮」
うま煮は「旨煮」とも「甘煮」とも書く。肉や野菜を砂糖と醤油を多めに使って甘辛く煮たもの。「鶏肉のうま煮」「干し椎茸のうま煮」などがある。

角煮

角煮
炊飯器の保温機能を使って作った「ゆで卵入り豚の角煮」
材料を角切りにして煮たもの。よく知られているのが「豚の角煮」「かつおの角煮」。

甘露煮

甘露煮
米のとぎ汁に2~3時間浸けて戻し、ウーロン茶を出汁代わりにして煮た「身欠きにしんの甘露煮」
ふな、小鮎、はぜなどの小魚を素焼きにしてから、ゆっくり煮込んで、骨まで食べられるほどやわらかくしたもの。 剥き栗を甘く煮たものも甘露煮という。

炊き合わせ

炊きあわせ
厚揚げを煮て取り出し、同じ煮汁で茄子を煮て盛り合わせた「厚揚げと茄子の炊き合わせ」
関西の煮物。2種類以上のものを、それぞれの持ち味を生かして煮あげて、1つの器に盛り合わせたもの。関東では、少し味を濃く仕上げて「煮合わせ」という。

みそ煮

味噌煮
骨まで食べられるよう、ゆっくりコトコト煮た「さんまの味噌煮」
サバやサンマに用いられる煮方。みそが青魚特有のくせや生ぐさみを消してくれる。「みそ炊き」ともいう。白みそで煮上げたものは「西京煮」という。

蒸し煮

蒸し煮
鍋に小松菜と鶏のササミを重ねて蒸し煮にした「小松菜と鶏肉の蒸し煮」
少量の水分を加えるか、材料から出た水分だけで、蒸すように煮上げること。ぴたっと蓋をして加熱するのがポイント。炊飯器が得意とする煮方。

じぶ煮・吉野煮

じぶ煮
フライパンで焼いてから煮た「高野豆腐の焼きじぶ煮」
じぶ煮は、鴨や鶏肉に小麦粉をまぶし、煮立てた煮汁に入れて煮る、金沢地方の郷土料理。吉野煮は、白身魚や野菜にくず粉をまぶして煮たもの。どちらも、煮汁にほどよいとろみがつく。 「鶏肉のじぶ煮」「白身魚の吉野煮」などがある。

以下に、煮物に関連する言葉の意味と方法を紹介します。
 

ひと煮立ち

煮汁が沸騰してから、ほんの少し煮ること。「……したら火を止める」。

下煮

下ごしらえの1つで、煮えにくい材料や味のしみにくい材料をあらかじめ煮ておくこと。

煮えばな

本来の意味は煎じ立ての香りの高いお茶のことで、みそ汁や煮物が煮上がったばかりの時点をいう。「みそ汁は……が一番おいしい」。

煮切る

料理に使う酒やみりんを沸騰させ、アルコール分を飛ばしてマイルドにする方法。

湯煎(ゆせん)

火で直接煮ず、湯を沸かした鍋の上に材料を入れた鍋かボウルを重ねて、湯で加熱する方法。「湯煎でバターを溶かす」。

煮含める

薄味をつけたたっぷりの煮汁でゆっくり煮て、味をしみこませること。

追いがつお

竹の子や里芋などの、淡白な味の材料を煮るときによく使われる方法で、 削り節をガーゼで包んで、材料と一緒に煮ること。煮汁が少なくなったら絞って取り出す。使ったあとの削り節は、お浸しにかけたりして食べる。

鍋止め

煮物が煮上がったあと、味を含ませるために、しばらく鍋に入れたままにしておくこと。

それでは、最後に、味付けの失敗を挽回するワザを紹介します。
 

味が薄かったとき

■煮汁が残っている時
煮汁だけを他の鍋に移して煮詰めて戻す。煮汁がたっぷりある場合は適量を取り置いて、残った煮汁を煮詰めるか、濃い目に味付けて片栗粉でとろみをつけて煮物にかける。取り置いた煮汁は、火が通っていれば冷蔵で2~3日は大丈夫なので、新たな煮物の煮汁に使う。

■煮汁が残っていない時
煮汁がほとんどない場合は、キムチの汁かキムチの素を少量かけて電子レンジで加熱する。胡麻和えの衣を作ってかける。甘味噌をかける。和風ドレッシングをかける。

味が濃すぎたとき

例えば肉じゃがの場合。少々の濃さなら白髪ネギをたっぷり天盛りする。生が嫌なら、ネギの上から熱したごま油をジュッとかける。油揚げに詰めてグリルで焼く。つぶしておからやマッシュポテトを足して、コロッケにしてしまう。煮汁が多い煮物なら、煮汁を適量取り分けて湯を足して煮る。取り分けた煮汁は冷蔵しておいて後日使う。

砂糖と間違えて塩を入れてしまったら

そんな究極な間違いをしてしまったときは、思い切って洗って煮直す。材料を全部ダメにするよりはマシ。
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※衛生面および保存状態に起因して食中毒や体調不良を引き起こす場合があります。必ず清潔な状態で、正しい方法で行い、なるべく早めにお召し上がりください。また、持ち運びの際は保存方法に注意してください。