新しく登録された文化遺産
下記15件の世界遺産が文化遺産として加わり、文化遺産の総数は704件となった。モーリシャスの「核実験場ビキニ環礁」、タジキスタンの「サラズムの原始居住域」はそれぞれの国ではじめての世界遺産登録となった。■アムステルダムのシンゲル運河内の17世紀の環状運河地区
船が行き交っているシンゲル運河の様子
オランダ、2010年、(i)(ii)(iv)
同心円状の5つの運河に囲まれた街、アムステルダム。16~17世紀に港湾都市としての開発がはじまり、運河が整備され、その周辺に切妻屋根の独特の街並みが誕生した。シンゲル運河は花市で有名だ。
■アルビ司教都市
Episcopal city of Albi
フランス、2010年、(iv)(v)
アルビはローマ時代からの歴史を持ち、10~11世紀に拡大、13世紀以降はアルビジョワ十字軍の拠点として繁栄した。古い橋=ポン・ヴィユーやベルビー宮殿をはじめ、赤とオレンジのレンガに彩られた特有の街並みが残る。
■ディルイーヤのトライフ
At-Turaif District in ad-Dir'iyah
サウジアラビア、2010年、(iv)(v)(vi)
15世紀より建設がはじまったディライヤは第一サウード王朝の首都。エジプトやオスマン・トルコと争った18~19世紀には政治的にも宗教的にも要衝となり、ツライフの要塞はその中心となった。
■サラズムの遺跡
Proto-urban site of Sarazm
タジキスタン、2010年、(ii)(iii)
ステップが広がり、遊牧民が暮らす中央アジアにあって、サラズムには紀元前4千~同3千年のものと見られる中央アジア最古の定住跡がある。農業や灌漑の遺跡が残るほか、イランやインド等との交易の様子も伝える。
■アルダビールのシェイフ・サフィー・ユッディーンの修道院と聖者廟複合体
Sheikh Safi al-din Khanegah and Shrine Ensemble in Ardabil
イラン、2010年、(i)(ii)(iv)
アルダビールはイスラム神秘主義教団スーフィーの拠点。登録地では16~18世紀に建てられた聖なる霊廟をはじめ、モスク、学校、図書館、病院等が集約した機能的な空間が構築されている。
■タブリーズの歴史的バザール複合体
Tabriz Historic Bazaar Complex
イラン、2010年、(ii)(iii)(iv)
ヨーロッパと南アジア、東アジア、中東をつなぐ要衝として、またイル・ハン国やサファーヴィー朝の首都として発達したタブリーズ。レンガ造りのバザール群(市場)がその繁栄を物語る。
■ジャイプールにあるジャンタール・マンタール
ジャイプールのシティ・パレスにあるジャンタル・マンタルの天体観測施設
インド、2010年、(iii)(iv)
18世紀にジャイ・シン2世が造った天体観測施設。星の位置を測る階段状の設備をはじめ、約20もの石造施設が存在する。望遠鏡等の道具は使用せず、直接人間の眼で観察し、星の高度や日食・月食の周期等を測定した。
■河南登封の文化財“天地之中”
Historic Monuments of Dengfeng in "The Centre of Heaven and Earth"
中国、2010年、(iii)(vi)
古代中国で天と地の中心と信じられてきた登封の嵩山。数々の祭礼施設や天文台が残されているほか、達磨大師による禅発祥の地であり武術修行で知られる少林寺がいまも活動を続けている。
■韓国の歴史的集落群:河回と良洞
Historic Villages of Korea: Hahoe and Yangdong
韓国、2010年、(iii)(vi)
14~15世紀に建設がはじまり、韓国儒教思想の中心地として、また両班と呼ばれる貴族文化で繁栄した河回村と良洞村。風水を駆使し、自然との一体化を体現したのどかな村落風景が伝えられている。
■ハノイ - タンロン王城遺跡中心地区
Central Sector of the Imperial Citadel of Thang Long - Hanoi
ベトナム、2010年、(ii)(iii)(vi)
900番目に登録された世界遺産。「昇龍」を意味するタンロンは李王朝の太祖が1010年に都を置いた場所で、今年1000周年を迎える。7~19世紀にわたって中国や南アジアの影響を受けながら、独特の文化を形成した。
■オーストラリア囚人遺跡群
Australian Convict Sites
オーストラリア、2010年、(iv)(vi)
18~19世紀、イギリスはシドニーやタスマニア周辺を中心に、アボリジニから奪った海岸沿いの肥沃な土地に施設を造り、有罪を宣告された受刑者を送り込み、植民地拡大を図った。そのときの11の施設が登録された。
■ビキニ環礁核実験場
Bikini Atoll, nuclear tests site
モーリシャス、2010年、(iv)(vi)
アメリカはビキニ環礁で1946~1958年の間に67回の核実験が行った。現在はサンゴが戻り、核爆発で沈んだ艦船はレック・ダイビングの人気スポットとなっているが、今回は変形した島をはじめ、核の爪跡を残す負の遺産であることから、文化遺産としての登録となった。
■ティエラアデントロの王の道
Camino Real de Tierra Adentro
メキシコ、2010年、(ii)(iv)
ティエラ・アデントロは全長2,600kmにもなる王道で、既存の5つの世界遺産に55の物件を加えて世界遺産登録された。サカテカス銀山の銀を運んだために「銀の道」とも呼ばれている。
■オアハカ中部渓谷ヤグルとミトラの先史時代洞窟
Prehistoric Caves of Yagul and Mitla in the Central Valley of Oaxaca
メキシコ、2010年、(iii)
遊牧民たちが採取狩猟生活をすごしていた先史時代の洞窟ながら、栽培されたと見られるトウモロコシの断片が発見され、北中米で定住がはじまった最初期の遺跡として注目を集めた。
■サンクリストヴォンの町のサンフランシスコ広場
Sao Francisco Square in the Town of Sao Cristovao
ブラジル、2010年、(ii)(iv)
北東部ブラジルの植民都市サン・クリストヴァンには、サン・フランシスコ広場を中心に、キリスト教布教の拠点として数々の修道院や教会、宮殿が残されており、18~19世紀にかけての都市景観が伝えられている。