かつては、「子どもが小学生になるまでは家庭に」が、主婦の再就職のパターンだった。しかし、近年再就職までの時期が早まっていると言われている。保育園の待機児が減らない理由のひとつは、ここにある。
ママはお仕事、子どもは保育園へ |
再就職の時期が早まっている?
出産のために仕事を辞めた女性は、専業主婦になった。子どもが小さいうちはできるだけ自分の手で育てたい。子どもだけで留守番ができるようになったら、パートを探す。子どもの進学費用の足しにしなくちゃ。これが、かつての「主婦の再就職」の典型的なパターンだった。が、この図式に変化が起きていると言われている。子どもが6歳未満で働きに出る母親が増えているというのだ。
再就職の理由は「生きがい」から「経済的理由」へ
2004年7月に出版された『年収1/2時代の再就職』によると、小さな子どもがいる母親が再就職を急ぐ理由として、「経済的不安」が挙げられている。結婚当時は思いもしなかった夫の収入減や定年までの雇用の不確実さが増すにつれ、「いずれ」と思っていた再就職が「今すぐ必要」なものとなっていったようなのだ。
働きさえすればハッピーになれる?
主婦の再就職についてのよくあるストーリーは、「家にいるときよりも、社会の中にいるんだという実感があり、ハッピーです!」というようなものである。だが現実には、職探しや保育園探し、家事と育児と仕事の両立、子どもの病気・・・など、再就職への道のりは険しい。何より、再就職の目的が「経済的理由」の場合、正社員になる道がほとんど閉ざされているに等しい「子持ち女性」は、かなり厳しい状況となる。残業ができない、子どもの急な病気で休む必要がある・・・このような条件で働くには、正社員では難しいのが今の時代だ。
また、「家事と育児と仕事の両立」も古くて新しい問題だ。過労寸前まで働いている夫に家事分担を頼めず、母親自身が身体をこわしてしまうことも珍しい話ではない。
それから、小さい子どもを持つ母親の再就職では、保育園入園の問題も重要だ。「保育園が先か、仕事が先か?」というのは、再就職を経験した母親の中では必ず話題となるテーマである。そのため、「最初は認可外の保育園でした」というケースがかなり多い。認可外であったり、また地域によっては認可園でも5万円以上の保育料となるところもある。パートで働く女性の半数以上は年収100万円未満である(『年収1/2時代の再就職』より)ことなどから「何のために働いているのか分からなくなる」という声もよく聞かれる。
保育園は、まだまだ足りなくなる
しかし現在のような経済状況の中では、このような「早めの再就職を」という傾向はこの後も続くだろう。「保育園を増やすと、需要が呼び起こされる」と言われるが、それ以上のペースで再就職希望者が増えているのが現状なのだ。「非正規の仕事の待遇改善」「子育て世代の男性の働き方を見直す」「保育園を増やす」。この3点が早急に改善されない限り、少子化は止まらないだろう。
こんな時代をどう生きる?-「勝ち」「負け」ではなく
『負け犬の遠吠え』では、「金持ちか否かに関わらず、結婚して子どものいる女性は勝ち犬である」としている。しかし、現実的には「勝ち犬女性」の周りにあるのはこのような状況だ。このような状況の中で再就職へ踏み出すか、経済的には不安でも踏みとどまるのか・・・。母親自身の健康や、子どもと向き合う時間の確保などの問題についてじっくり考え、また、「無理なときは引き返す」という気持ちを持ちつつ決断することが望まれる。人生は「勝ち」「負け」ではなく、「自分が気持ちよく生きていけること」が大切だから。
■参考文献■
野口やよい 『年収1/2時代の再就職』 中公新書ラクレ 2004年刊
■関連リンク■
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