防犯/防犯小説

児童買春の罪と罰~ある男の未来が消えた日(2ページ目)

「誰にも知られない」「一度だけなら」と、犯罪と知りつつ手を出してしまった男。その代償は計り知れないほど大きいものだった。身近な犯罪が人生をくるわすことがあるという一例。

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

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発覚した日

しかし、そのときはやってこなかった。ある日、勤務先に刑事が二人やってきた。「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反」ということで逮捕状を示されると、男は呆然とした。ざわめく部署内の人びとの視線を痛いほどに感じながら、男は警察署に連行された。

たまたま大きな事件がなかったせいか、あるいは男が公的機関に勤務する立場だったからか、男が児童買春容疑で逮捕されたことは一部テレビと新聞、インターネット上で報道された。あのときの少女が補導されて、少女の携帯電話に残っていた電話番号から男の身元が割れたのだった。中には1年以上前のことであっても逮捕される場合があるという。

結果的には初犯でもあり、前科もなかったことから不起訴となったのだが、マスコミに氏名が出てしまった以上、勤務を続けることはできなかった。妻も娘を連れて実家に戻り、離婚ということになった。妻も勤務先を変わらざるを得ず、旧姓に戻って新しい仕事を探すという。離婚の慰謝料、娘の養育費など、職を失った男の肩に、現実はあまりにも重かった。

「たった一度」であろうと、罪は罪。いくら合意の上とはいっても、相手が未成年であり、対価を支払った以上は、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」違反になる。いけないことと分かっていながら、(自分は大丈夫だろう)という根拠のない思い込みは通用しない。


■「天網恢恢疎にして漏らさず~てんもうかいかいそにしてもらさず」(老子)天の張る網は、広くて一見目が粗いようであるが、悪人を網の目から漏らすことはない。悪事を行えば必ず捕らえられ、天罰をこうむるということ(大辞泉より)。

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