新築マンション市場にも明るさが散見され始める
ここ最近、マンション市場に関して明るい材料が散見されるようになりました。まず、5月31日に公表された4月の新設住宅着工戸数(国土交通省)は17カ月ぶりに前年同月比でプラスに転じ、市場心理に好印象をもたらしました。
また、首都圏・新築マンションの月間契約率(不動産経済研究所)は5カ月連続で好調・不調の分かれ目とされる70%を上回り、改善傾向を裏付ける一要素となっています(下グラフ参照)。この傾向は首都圏のみならず近畿圏でも見られており、日本全土へと広がりつつあることを印象付けます。
加えて、日本銀行が公表した6月の金融経済月報では「住宅投資は下げ止まっている」「先行きの住宅投資については、着工戸数の動きなどから見て徐々に持ち直しに向かうと予想される」と、緩やかな回復を見込んでいます。「雇用・所得環境の厳しさから住宅投資の本格回復には時間が必要」との認識は示しつつも、今年1~3月期の実質GDP成長率(改訂値)が年率換算でプラス5.0%という高い伸びを示したように、当面、先行きについては景気回復傾向が続くものと予想しています。
その甲斐あってか、2009年6月4日に「長期優良住宅普及促進法」が施行されてから丸1年、長期優良住宅として認定された住宅は今年5月末時点で7万413件に達しました。現在、その98%が一戸建て住宅ではありますが、今後、マンション(共同住宅)にも長寿命への配慮が広がることは疑う余地もありません。なぜなら、マンションの資産価値を決定付ける重要な要素として、「長期耐用性」が確実に受け入れられ始めているからです。「スクラップ・アンド・ビルド」から「ストック重視」へと住宅政策が方向転換した今、ロングライフ住宅は付加価値ではなく、“基本性能そのもの”になろうとしています。
しかし、「長期優良住宅普及促進法」では住宅の所有者(認定計画実施者)に対して、認定長期優良住宅の建築および維持保全の状況に関する記録を作成し、これを保存するよう義務付けています。長期にわたり良好な状態で使用できるよう、計画的な維持管理を促しています。要は、「引き渡しを受けたら、それまで」では済まされないというわけです。所有者自身が自らの手で住宅履歴情報を蓄積していかなければなりません。
そのため、これに違反した場合、所管行政庁から認定が取り消されるおそれがあります。当然、取り消されれば長期優良住宅とは認められなくなります。そうならないためには、常日頃からの注意が欠かせません。
次ページで、同法の条文を確認しておきましょう。