世界遺産/世界遺産とは

自然遺産とは(3ページ目)

世界遺産には文化遺産・自然遺産・複合遺産という3つの種類がある。本記事では自然遺産の定義から世界遺産に占める割合、自然遺産の4つの登録基準、すべての登録基準を満たす「キング・オブ・自然遺産」21件まで、世界自然遺産について解説する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

キング・オブ・自然遺産 後編

アメリカの世界遺産「グランドキャニオン国立公園」

アメリカを代表する「グランドキャニオン国立公園」のダイナミックな景観。大地に露出した地層としては世界最古級を誇る

<北中米>

■イエローストーン国立公園
アメリカ、1978年、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
深い渓谷や不思議な色の湖・火山から発生する間欠泉・熱水・石灰棚といった火山地形で知られる自然遺産。1872年、この奇跡的な景観を守るためアメリカ大統領グラントが保護を決定し、世界初の国立公園となった。一帯にはバッファローやグリズリー、オオカミなどが暮らす豊かな生態系が広がっている。

■グランドキャニオン国立公園
アメリカ、1979年、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
7000万年前に隆起した土地がコロラド川によって浸食された、全長約450キロメートルの大渓谷。深さは最大でおよそ2000メートルにもなり、剥き出された地層は最古のもので20億年以上前にまで遡る。現在も浸食は進んでいるが、削られるペースは1000年で10センチメートルにも満たない。

■グレート・スモーキー山脈国立公園
アメリカ、1983年、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
その名のとおり1年中霧に覆われた森林地帯で、落葉樹による原生林が残る世界的に希少な国立公園。標高差はおよそ2000メートルに及び、豊かな水資源と多様な気候から多種多様な植物が繁茂している。サンショウウオやクマなど野生動物の宝庫でもある。

■クルアーニー/ランゲル - セント・イライアス/グレーシャー・ベイ/タッチェンシニー - アルセク
アメリカ/カナダ共通、1979年、1992・1994年拡大、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
アメリカ、カナダ国境にまたがって登録された世界遺産で、極地を除くと世界最大規模となる大氷河で知られる。雪と氷河に閉ざされた厳しい自然環境にもかかわらず、海から標高5959メートルのローガン山まで多様な生態系を有し、特にグリズリーやトナカイの世界有数の生息地となっている。

■タラマンカ地方 - ラ・アミスター保護区群/ラ・アミスター国立公園
コスタリカ/パナマ共通、1983年、1990年拡大、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
コスタリカ、パナマにまたがる熱帯雨林地帯。コスタリカは生物の宝庫といわれるが、その中でも際立っているのがこの世界遺産。特に鳥類の宝庫として知られ、見ると幸せになるという伝説の鳥ケツァールや、ホバーリングで有名なハチドリなど、500種を超える鳥類が生息している。

■リオ・プラタノ生物圏保護区
ホンジュラス、1982年、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
こちらも中米の熱帯雨林地帯で、マングローブが広がる海岸から標高1000メートルを超える山岳までをプラタノ川が緩やかに蛇行している。川や海の豊富な水資源が多彩な動植物を育んでおり、ケツァールやマナティなど固有種や絶滅危惧種も少なくない。
エクアドルの世界遺産「ガラパゴス諸島」のウミイグアナ

エクアドルの世界遺産「ガラパゴス諸島」のウミイグアナ。IUCN(国際自然保護連合)レッドリスト危急種

<南米>

■ガラパゴス諸島
エクアドル、1978年、2001年拡大、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
ダーウィンの『種の起源』で一躍有名になった島々。大陸から約1000キロメートルも離れた隔絶された環境のなか、イグアナやゾウガメ、フィンチ、サボテンといった一定の種のみが大いに繁栄し、島ごとの環境に適応して亜種へと進化した。こうした固有種が進化論の着想につながった。

記事はこちら>>ガラパゴス諸島:ダーウィンが進化論を着想した楽園

■サンガイ国立公園
エクアドル、1983年、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
赤道近くにあり、裾野部分にはアマゾンにつながるジャングルが広がる一方、標高4000メートルを超えると万年雪や氷河が広がっており、顕著な植物の垂直分布が観察される。主峰サンガイ山は標高5410メートルに達し、国立公園内の標高差は4000メートルを超える。

■カナイマ国立公園
ベネズエラ、1994年、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
テーブル・マウンテンで有名なギアナ高地の世界遺産。コナン・ドイル著『ロスト・ワールド』のモデルでもある。テーブル・マウンテンは100以上存在し、地上から1000~2000メートルも切り立ったテーブル上はそれぞれ環境が異なり、いまだ人跡未踏の地も少なくないという。
ナミビアの世界遺産「ナミブ砂海」

ナミビアの世界遺産「ナミブ砂海」、死の砂漠デスフレイ。もともとオアシスだったが、干上がって枯れ果てている

<アフリカ>

■メイ渓谷自然保護区
セーシェル、1983年、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
セーシェル諸島に位置するプララン島の自然保護区で、不思議な形をした巨大な実をつけるココ・デ・メールの原生林で知られている。手つかずの原生林には多種多様な動植物が暮しており、固有種も少なくない。

■ンゴロンゴロ保全地域
タンザニア、1979年、2010年拡大、文化遺産(iv)、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
高さ400~600メートルにもなる崖に囲まれた20×15キロメートルほどのクレーターの中には、ゾウやライオン、チーターをはじめ2万~3万頭もの野生動物たちがおり、彼らのほとんどはこの外に出ることなく生涯を終える。猿人や原人の骨が出土している「人類発祥の地」オルドバイ渓谷も構成資産のひとつ。

■ナミブ砂海
ナミビア、2013年、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
5000万~1億年前に誕生した世界最古の砂漠のひとつ。特徴は巨大なデューン(砂丘)で、高さ250メートルを超えるデューン群は世界最大規模を誇る。年間降水量20~50ミリメートルという超乾燥地帯で、植物の53%、昆虫の52%、爬虫類の44%、哺乳類の17%が固有種だ。

記事はこちら>>ナミブ砂海/ナミビア

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