キング・オブ・自然遺産 前編
「火山の博物館」との異名を持つロシアの世界遺産「カムチャツカ火山群」のアヴァチンスカヤ火山
<ヨーロッパ>
■バイカル湖
ロシア、1996年、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
2500万年以上前にできた世界最古の湖で、水深も1620メートル超で世界一。さらに、淡水湖としては体積世界一で、その透明度と固有種の数でも世界一といわれる。通常、湖は川の流れが変わったり堆積物が積もったりして数万年以内に干上がるものだが、この湖は奇跡的に独自の景観と生態系を維持している。
■カムチャツカ火山群
ロシア、1996年、2001年拡大、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
4750mのクリュチェフスカヤ山を筆頭に、100以上の火山が連なるカムチャッカ半島。ツンドラ気候の極寒地帯にあって多くの氷河を形成する半面、活発な火山活動が間欠泉や火山ガスをあちこちから噴出させ、独特の景観を生み出している。
<アジア>
■雲南三江併流の保護地域群
中国、2003年、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
アジアを支える長江、メコン川、サルウィン川の3つの大河が約170キロメートルにわたって並行に流れる渓谷地帯。周囲に6000メートル級の山々を従え、特に梅里雪山は聖山として崇められている。その美しい景観からこの地こそジェームス・ヒルトン著『失われた地平線』に描かれた理想郷=シャングリラではないかといわれている。
■グヌン・ムル国立公園
マレーシア、2000年、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
ボルネオにある世界遺産で、標高2377メートルのムル山の山腹には広大な熱帯雨林が広がり、深い森を川が大きく蛇行しながら流れている。森の下にはいまだ全貌が明らかになっていない巨大な洞窟群が張り巡らされており、数多くの固有種が暮らしている。
オーストラリアの世界遺産「グレートバリアリーフ」のハートリーフ。グレートバリアリーフは月から見える生物の痕跡でもある
■グレートバリアリーフ
オーストラリア、1981年、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
全長は2000キロメートルを超え(日本の本州が1300キロメートル)、島の数は1000に達し、400種以上のサンゴと1500種以上の魚類が生息している世界最大のサンゴ礁。地球温暖化によると思われるサンゴの白化現象が進むなど、そのデリケートな生態系から「地球環境のバロメータ」としても注目を集めている。
■タスマニア原生地域
オーストラリア、1982年、1989年拡大、文化遺産(iii)(iv)(vi)、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
オセアニアは早くから他の大陸と分離したため、カンガルーやコアラのように動物たちが独自の進化を遂げている。際立っているのがタスマニア島で、森林や草原、氷河による大渓谷など、多様な気候が多くの固有種を育んだ。また、2万~1万年前に描かれたロック・アートは文化遺産として高く評価されている。
■クイーンズランドの湿潤熱帯地域
オーストラリア、1988年、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
1億3000万年前にできた世界最古といわれる森。恐竜の絶滅が6500万年前であるから、かつては恐竜たちもここで育ったことになる。海岸沿いに約500キロメートルにわたって伸びている森林で、海側はグレートバリアリーフと並行・隣接している。
■西オーストラリアのシャーク湾
オーストラリア、1991年、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
生命の祖先ともいわれるストロマトライトがいまだ成長を続ける神秘の湾。ストロマトライトはシアノバクテリアが砂などを取り込んで成長する岩で、古いものは35億年前に遡る。大気中の酸素はこの時代に作られたとされる。クジラやジュゴンなど大型哺乳動物も数多い。
■テ・ワヒポウナム - 南西ニュージーランド
ニュージーランド、1990年、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
海から一気に3000メートルを超えてそびえ立つサザン・アルプス。海岸のフィヨルド(氷河が山を切り裂いて生まれた断崖)から山岳の氷河まで多様な生態系を有し、その厳しい自然のおかげでニュージーランドの貴重な自然が残された。トレッキングルートは「世界一美しい散歩道」と呼ばれている。