証券税制のポイント3:特定口座の有効活用
証券税制の活用ポイントの3つ目は特定口座の有効活用という点です。株の配当を受取ったり、譲渡をした場合に税金が課された際、その根拠を示すために確定申告書に配当所得および譲渡所得の計算をしなくてはいけないのが原則なのですが、その計算を納税者が自らする必要がないというのがこの特定口座という制度です。特定口座は大きく分けて「簡易申告口座」と「源泉徴収選択口座」の2種類あります。
簡易申告口座とは、年間の配当所得および譲渡所得の計算を行って年間取引報告書という書式にまとめてくれた上で、所得税7%・住民税3%については差し引かれない口座のことです。簡易申告口座の場合には、原則、確定申告を行わなくてはなりません。
源泉徴収選択口座とは、年間の配当所得および譲渡所得の計算を行って年間取引報告書にとりまとめ、さらに所得税7%・住民税3%という軽減税率を差し引くことまでしてくれる口座です。源泉徴収選択口座を選択した場合には、確定申告が不要になる点がメリットです。
ポイント2にあるように、確定申告を行うことによって適用となる税制もあるので注意が必要です。特定口座は一金融機関一口座しか開設できないという決まりになっているため、例えばA証券会社の特定口座で行った取引では利益が計上されていても、B証券会社の特定口座で行った取引では損失が計上されていたというような場合、源泉徴収選択口座は申告不要だからといって、申告せずに放置しておくと源泉徴収選択口座同士の損益通算や繰越控除の機会を逃すこととなり、結果として支払う必要のない税金を源泉徴収されているということも想定できます。
このような事態を想定して、源泉徴収選択口座を開設した人でも必要に応じて確定申告を行うという選択肢もきちんと与えられています。源泉徴収選択口座を利用しいる人は、安易に申告不要とせず、確定申告の要否を的確に判断することが節税につながります。
今後の注目ポイント、日本版ISA
最後に、今後導入が予定されている証券税制の目玉になるものとされているものを紹介しておきます。「日本版ISA」と言われているものですが、証券税制のポイント1で紹介した軽減税率の打ち切りと入れ変わるかたちで平成26年1月からの導入が予定されています。ISAとは「Individual Savings Account」の略で、英国の制度を参考にしたものを、日本に導入するので日本版ISAと言われています。現在、とりまとまっている主な項目は以下のとおりです。
- 導入時期 : 平成26年1月から
- 対象者 : 満20歳以上の居住者
- 非課税口座開設期間 : 平成26年から平成35年、ただし口座を一度開設すると5年間非課税とできる
- 非課税投資額 : 預け入れ額、年100万円まで
なお、軽減税率が廃止されると、上場株の譲渡や配当、公募株式投資信託の償還や解約、FXの売買にかかる税率まで所得税15.315%・住民税5%に集約されます。税率が集約されることで、今後、そのような金融商品の損益通算の対象が拡大されることが期待されています。
ムダな税金を払わないことも立派な資産運用です。現在施行されている税制と、
将来施行予定の税制とを両方頭にいれて、証券税制を有効活用したいものです。
【関連記事】
・ 日本版ISA口座導入で投資信託への影響はどうなる
・ 運用益が非課税!「日本版ISA」の拡充に期待