不足分は退職金で賄える?
2000万円か~。これで老後資金の不安は大丈夫かな?
では、年金で不足する生活費をカバーするために、60歳時点で保有したい金融資産の目安はいくらでしょう。
「平成22年家計調査」を基に生活費の不足額を年60万円として試算すると、年利1%で1年複利運用しながら毎年60万円を30年間受け取るために必要な資金は「60万円×25.80770822=約1550万円」、25年間では約1320万円になります。この金額であれば退職金で賄えそうです。
しかし、この金額は老後の生活費のカバーだけです。これ以外に、レジャー費用やリフォーム費用、介護費用などなど老後の生活を豊かにするためには様々な資金が必要です。一般的に「退職時に保有したい金融資産は3000万円」といわれているのはこのような理由からです。
退職金が仮に2000万円とすると、退職するまでに1000万円――10年後退職であれば毎年100万円――を財形年金貯蓄や定期預貯金、公社債投信、個人年金保険など安全性の高い金融商品でコツコツと積み立てれば十分に準備できます。
2つの口座で家計管理
では、毎月の生活費の管理――年金と生活費の不足分――はどうしましょうか。
年金は2ヶ月ごと(偶数月)に2ヶ月分が振り込まれるので、毎月決まった日にお給料が振り込まれる生活に慣れた身には、2ヶ月の収支管理は戸惑うことも多く「年金受給月はついつい使い過ぎてしまう」と言う声を耳にすることもあります。使いすぎを防ぎつつ「貯蓄が減る→心細い→節約しなければ……」というストレスから開放される方法は、とっても簡単です。口座を2つ作ればいいのです。
ひとつは年金振込口座、そしてもうひとつ生活費口座を準備して、月初めに年金口座から「2か月分振り込まれる年金の1/2」を、金融資産から「生活費の不足分」を生活費口座に入金します。ちょうど毎月お給料が振り込まれるように。これは使い切っていいお金で、残ればそれはあなたへのご褒美=「へそくり」です。
あるいは支出を「銀行引き落とし分」と「それを除く生活費」の2つに分けて管理する方法もあります。食費や交通費、保健医療費など現金で支払う支出のみ(一定額)を年金振込口座で賄い、光熱費や通信費、税金、社会保険料等を金融資産の口座から 引き落とす、という考え方です。
定期的に一定の金額を確保できる次のような金融商品を利用すれば、それ程難しくなく1ヶ月単位の家計管理が可能です。
- 利息分割受取型定期預金
- 部分解約可能型定期預金
- 年金受取型預金
- 一時払いの個人年金保険
統計やアンケート調査を基に考えられた老後必要資金は「豪華な絵」です。それを基準に「老後資金は不足する!」「リスクのある金融商品で運用しなければ老後は絶望的」という脅迫観念にとらわれている人が少なくありません。「現在の生活費」をベースに、身の丈にあったシンプルな生活、レジャー、子供への援助、趣味などなど老後のイメージを夫婦でじっくり話し合い、実り多い老後資金計画をたてましょう。健康・生き甲斐・経済のバランスを考えながら。