年金/遺族年金の仕組み

自営業者に厳しい遺族年金制度(2ページ目)

家計の大黒柱に万が一のことがあったときの所得保障である遺族年金ですが、自営業者にとっては厳しい制度になっています。この実態をケーススタディー形式で検証してみます。これから脱サラを考えている方も必見!

和田 雅彦

執筆者:和田 雅彦

年金ガイド

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国は掛捨て防止のための最低限の保障を準備

izoku230624

会社員と自営業者では、自助努力で用意する保障の額も変わる

今回のケースでは、遺族厚生年金はもちろんのこと、遺族基礎年金さえ出ない、要は遺族年金の支給は「全く無い」という状況となってしまいます。

そうすると、Aさんは28年間も保険料を払い続けたにもかかわらず、老齢年金も遺族年金ももらうことができない、いわゆる「保険料の掛捨て」という事態になってしまいます。

Aさんは29年間国民年金を納め続けており、生きていれば65歳以降老齢基礎年金を貰える権利もあったのです。これだけ長い間払い込んで、何も支給されないでは、あまりに理不尽というものです。

しかしそのために国は、掛捨て防止の意味合いから、「寡婦年金」と「死亡一時金」という給付制度を用意しています。

「寡婦年金」と「死亡一時金」って何?

■寡婦年金
寡婦年金とは、国民年金の加入期間が25年以上ある夫が死亡したときに、65歳未満の妻に支給されます。要件としては次のすべてを満たす必要があります。

  1. 夫が老齢基礎年金を受ける資格を持っていたこと
  2. 夫の死亡当時、夫によって生計を維持し、かつ、夫との婚姻関係が10年以上継続した65歳未満の妻があるとき
  3. 死亡した夫が障害基礎年金の受給権者であったことがないこと、または死亡した夫が老齢基礎年金の支給を受けていないこと
寡婦年金の年金額は、夫が貰えるはずであった老齢基礎年金の4分の3に相当する額となりますが、支給は60歳から65歳までという「期間限定」です。

■死亡一時金
死亡一時金は、国民年金の第1号被保険者としての保険料を36月以上納めた人が、老齢基礎年金、障害基礎年金を受けずに死亡したときに、生計を同じくしていた一定の遺族に支給されます。要件としては次のすべてを満たす必要があります。

  1. 死亡日の前日において死亡日の属する月の前月までに第1号被保険者としての保険料納付済期間の月数と保険料半額免除期間の月数の2分の1を合計した月数が36月以上であること
  2. 老齢基礎年金または障害基礎年金の支給を受けたことがないこと
死亡一時金の額は、保険料納付済期間の月数と保険料半額免除期間の月数の2分の1を合計した月数が、
36月以上180月未満   120,000円  ~ 420月以上    320,000円
となっています。

今回のAさんのケースでは、寡婦年金、死亡一時金とも要件に該当しますが、両方もらうことはできず、どちらかを選択して受け取ることになります(どちらを受取るべきか詳しくは、寡婦年金と死亡一時金どちらを貰うのが得?を参考にして下さい)。

死亡一時金は一度きりの支給でしかも金額も少ないので、寡婦年金を貰うのが得だといえますが、寡婦年金は奥さんが60歳になるまで支給されず、残念ながら遺族保障として充分な額には程遠い状況です。

 

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