もうひとつの繰上げ方法である「一部繰上げ」とは?
昭和27年9月生まれであるこの女性にとって、先ほどの老齢基礎年金の繰上げ(全部繰上げ)は、あまりお得でないことがわかりました。老齢基礎年金を繰り上げることで、64歳から受け取れるはずの「定額部分」が受け取れなくなることがお得でない原因の一つになるわけですが、この原因を少し解消する「折衷案」のような繰上げ方法が別に存在しています。それが「一部繰上げ」といわれるもので、老齢基礎年金と定額部分のそれぞれ一部だけ繰り上げるシステムとなります。60歳から繰上げる場合を図で示すと以下のとおりになります。
老齢基礎年金と定額部分の繰上げの減額方法はそれぞれ独自の計算方法を用いています。
定額部分(繰上げ調整額)の計算方法は、本来の年金額×A/Bとなります。
(A:本来の支給開始から65歳までの年数(月数)、B:繰上げ開始から65歳までの年数(月数))
簡単に言うと、この女性の場合、本来なら64歳から定額部分を受け取ることになりますので、本来1年間だけ受け取ることができたわけです。その1年間で受け取ることができた金額(80万円)を繰り上げて60歳から5年間で受け取ることになるということです。ですから、80万円÷5年=16万円
このケースでは、定額部分(繰上げ調整額)は16万円となります。
この女性の場合は、一部繰上げの方が得
それでは、一部繰上げした場合の老齢基礎年金の減額はいくらになるのかを見てみましょう。一部繰上げの場合の計算方法ですが、(本来の老齢基礎年金の額-定額部分繰上げ調整額)×0.5%×繰上げ月数となります。一部繰上げも全部繰上げも減額率は同じです。今回のケースでいうと、(80万円-16万円)×0.5%×60月=19万2000円が減額されることになります。
60歳から受け取れる老齢基礎年金の額は、44万8000円となります。これに先ほど計算した定額部分の調整額16万円を合わせると、一部繰上げした場合の受け取り総額は60万8000円となります。前のページで計算した「全部繰上げ」の場合の受け取り金額である56万円よりも多くなります。
ですから、この女性のケースは「全部繰上げ」よりも「一部繰上げ」の方が少しだけお得ということになりますね。尚、繰上げ自体は「全部」も「一部」の月単位ですることができますが、「一部繰上げ」については、定額部分の支給開始前にしかできませんので注意してください。
この女性の場合、60歳前半の年金の受け取り方法は
- 通常通りの受け取り
- 全部繰上げ
- 一部繰上げ
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