年金

特例措置がいっぱい!本当に制度改革大丈夫なの? 特例措置漬け年金、大丈夫!?

年金財政にとって「負担と給付」の均衡は、制度の根幹にかかわる部分で重要です。しかし、今のところ現役世代の保険料負担増のみ決行され、給付抑制の時期などが見えてきません。大丈夫なの?年金制度。

執筆者:All About 編集部

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文章:石津 史子(All About「年金」旧ガイド)
 

平成16年改正による年金額計算式は?

平成16年の年金制度改正法では、負担の範囲内で給付とバランスが取れるようになるまでは、年金額の計算にあたって、賃金や物価の伸びをそのまま使うのではなく、年金額の伸びを自動調整する仕組みが導入されましたね。
そして、これを「マクロ経済スライド」といいます。


「おや!すごい制度が導入されたわけだね。マクロ経済スライド期間が終われば、負担の範囲内で給付が行なわれるようになるのだから、年金制度は安泰だ!」

でも、本当にうまくいくのかな!!?
なぜって?
保険料は毎年スケジュールどおりアップしていきますけれど、年金額の伸びを自動調整するマクロ経済スライドは、まだ当分実施されそうもないからです。
まずこちらの平成16年改正による計算式をご覧下さい。

○基礎年金

780,900円(平成16年度額)×改定率×保険料納付月数/480ヶ月

○厚生年金(報酬比例部分)

平均標準報酬額×5.481/1000×被保険者期間の月数

(平均標準報酬額=過去のボーナス込みの賃金に再評価率を乗じて現在価値に置き換える)

「あれ??
確か、基礎年金って79万4500円じゃなかったっけ!?
それに、厚生年金の計算式もこんなにシンプルじゃなかったと思うんだけど…」


おかしいなぁ?>>次へ
 
「平成17年度の老齢基礎年金(40年加入)は、79万4500円です。
平成11年度の80万4200円に、その後5年間の物価変動を加味した年金額なのです。」

あれ~、えっ、本当!?
それでは78万900円と79万4500円の関係は??
わからない、わからない!どうなってるの!?



ひとつずつ解決していくことにしましょう!


 

平成17年度の基礎年金は、78万900円?それとも79万4500円? 前々回の財政再計算の年(平成11年度)の老齢基礎年金(40年加入)80万4200円を基準として、その後の物価スライドを加味して年金額を算出してみると、
80万4200円×0.971→端数処理して78万900円
ということで、本来平成16年度の年金額は78万900円だったのです。
またさらに、
平成17年度は、物価スライド率は±0%だったので、16年度の78万900円がそのまま据え置きとなり、78万900円が基礎年金の本当の年金額ということになりました。

ではなぜ、平成17年度は79万4500円なのでしょうか??

上の表をご覧下さい。
平成12年~14年の3年間は、トータルすると▲1.7%の物価スライドが行なわれるべきだったところが凍結されたのです。それで、本来なら78万900円の基礎年金が支給されるはずなのに、本来額より1.7%給付水準の高い79万4500円が支給されているという訳なのです。

 

特例措置が講じられた支給額を本来額にそろえる日は来る このままでいいの?

いい訳がありません。
少子高齢社会の到来で、年金財政は、さすがに大盤振る舞いできない危機的な状況下にあるからです。

ただし、物価スライド率が±0%だった平成17年度は、過去の凍結された1.7%を消化することはできませんでした。今後、早い段階で物価が上昇することを期待して…例えば、1%物価が上昇した場合、累積分1.7%のうち1%分が解消されることになり、その年の年金額は前年度と同じに据え置きになるという方法で、解消していくことになるのです。

◎押さえておきたいポイント
過去に凍結されてきた1.7%の物価スライド分を解消することが優先される

さて厚生年金はというと…もっともっと特例措置があるために、基礎年金以上に複雑なのです…>>次へ
 

本当に制度改革あったのか?特例措置漬けの厚生年金

「厚生年金の計算式は??」…と聞かれても、答えるのにちょっと困ってしまいます。
トップページに書いたように本来はシンプルな計算式なのですが、下記のような様々な特例措置や経過措置が講じられており、実際にはう~んと複雑怪奇な計算式だからです。

1.平成15年4月に総報酬制が導入されて、ボーナスも含む報酬の平均額に基づいて年金が計算されるしくみになった
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経過措置:平成15年3月以前と平成15年4月以降の加入期間を分けて計算⇒平成15年4月以降の加入期間しかない人はシンプルになる


2.平成12年4月から、報酬比例部分の給付水準は5%適正化(つまり削減)することになった
↓   ↓   ↓   ↓   ↓
特例措置:平成6年改正の計算式と平成12年改正の計算式で算出される年金額を比較し、従前額が高ければその額を保障する(従前額保障)⇒1.7%を解消した後も従前額の方が高い間はその額が保障されるので、給付水準の適正化(削減)は当分行なわれない

3.昭和61年4月から、老齢厚生年金は老齢基礎年金に上乗せして65歳から支給される報酬比例の年金となった
↓   ↓   ↓   ↓   ↓
経過措置:従来60歳から支給されていた特別支給の老齢厚生年金は、経過措置により段階的に65歳支給になる⇒生年月日や性別、加入していた制度などによって経過措置の内容が異なるが、昭和36年4月2日以降に生まれた男性(厚生年金の場合)から原則通りになる

以上のように法改正の歴史によって生み出された経過措置や特別措置などによって、厚生年金の計算式は超複雑になってしまったのです。

それでは、これからどうなるの? >>次へ
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