平成16年の年金法改正後から続く公的年金の検討課題とは?
9月に行われた第11回社会保障審議会年金部会の中で、平成16年の年金法改正後に残された公的年金制度の課題が検討されました。国民年金と厚生年金の両制度について検討が行われましたが、今回は検討課題として取り上げられた以下の4点について解説していきます。

<INDEX>
基礎年金の受給資格期間の見直しについて
国民年金保険料の徴収時効の見直しについて
パート労働者に対する厚生年金適用の拡大等について
育児期間中の保険料免除について

基礎年金の受給資格期間の見直しについて

現在の制度では、公的年金をもらうために必要な受給資格期間が原則25年です。これは諸外国の年金制度と比較してもかなり長いといわれています。

【主要各国の受給資格期間】
 受給資格期間
日本25年
ドイツ5年
イギリス男性 11年 女性 9.75年
韓国10年
アメリカ10年
ベルギーなし
フランスなし

※社会保険庁HP「主要各国の年金制度」より

受給資格期間には、保険料を納めた期間だけでなく、一定の免除を受けた期間や合算対象期間(カラ期間)を算入することができますが、実際に受給資格期間が満たせず無年金となっているケースの大半は長期の未納期間があるケースです。この問題を解決する見直し案として3つの論点が挙げられました。

  1. 受給資格期間の短縮
    受給資格期間を20年に短縮する。

  2. 受給資格期間の撤廃
    年金制度に1ヵ月でも加入すれば月額138円(=66,000円÷480月)を支給し、保険料の掛け捨てをゼロにする。

  3. 任意加入の延長と受給資格期間の短縮
    受給資格期間を5~10年とし、60歳以降の任意加入のみでも受給資格が取得できるようにする。現行で原則65歳までとなっている任意加入可能期間を合わせて見直す。
受給資格期間を短縮すれば、受給資格が得られやすくなって年金をもらえる人が増え、無年金の人を減らせるという点ではメリットがありそうですが、いくつかの論点があります。

1.と3.の案はともに受給資格期間を短縮することで無年金を防ごうとするものですが、「現在より保険料納付意欲をなくし、未納問題がさらに深刻化する」「限定的な効果しか期待できない」等の意見もあります。また、2.の受給資格期間の撤廃は、「行政コストの問題」等の問題が挙げられています。

受給資格期間の役割は、保険料納付意欲を高め一定の年金額を保障する最低保障機能と位置づけられています。今後、最低保障機能を強化するために受給資格期間をどの程度短縮するのか、また無年金者を救済するための費用負担をどうするのか、という点も含めて検討が続きます。

国民年金保険料の徴収時効の見直しについて

現在、滞納した国民年金の保険をさかのぼって納めることができるのは、2年前の保険料までです。それ以前の保険料は時効が成立しているので、納めることができません。保険料を納めやすくして無年金・低年金を防ごうとする観点から、時効後の保険料が納められるしくみとして以下の2点が検討されました。

  1. いつでも保険料が納められるようにする
    時効が成立した後、いつでも保険料を納められるようにする

  2. 納付期限が過ぎてから、5年間または10年間は保険料が納められるようにする
    時効後であっても、一定期間内であれば保険料を後納できるようにする
納付期間を延長すれば、受給権を得られる人が増えるのではという声もありますが、やはりいくつかの論点があります。

1.の案については、「後納する保険料が多額になる可能性が高いため、後納できるのが高所得者に限られる」「現役世代の保険料負担で年金給付を支える世代間扶養のしくみにそぐわない」などの問題も挙げられています。また、1.と2.の案の両方について、2年間の期限内に保険料を納める意欲を低下させ、モラル低下や現在進めている強制徴収の徹底に悪影響が出ることが懸念されています。

保険料の時効は、厚生年金や健康保険などほかの社会保険制度においても2年で時効となります。このため、時効を延長させることは難しいと考えられていますが、無年金者・低年金者の発生を最小限に食い止めるためには、弾力的な保険料後納制度が必要といえます。支払能力があるのに保険料を納めないケースがあることも含めて、どんな後納制度が問題解決につながるか、検討すべきであるとされています。

【主要各国の保険料納付の時効】
 時効
日本2年
ドイツ4年
イギリス6年
アメリカ3年
フランス3年
スウェーデン時効なし

※社会保障審議会年金部会への提出資料「諸外国の保険料の納付期間(徴収権の時効)」より



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