共働き夫婦のためのちょっとおトクな確定申告情報
いよいよ確定申告のシーズンがやってきました。会社勤めの方は、年末調整があるので、確定申告は自分にはあまり関係ないと感じられるかもしれません。けれども、確定申告は1年間分の税金を正しく精算する大切な制度です。何もしないと、余計な税金を払っているということもあります。そこで、確定申告の手続き概要と共働き夫婦のためのちょっとおトクな確定申告情報を、前編(手続き編)と後編(得情報編)に分けてご紹介します。今回は、前編として、確定申告の手続きの概要について解説します。
会社勤めの人でも確定申告するの?
会社勤めの人(給与所得者)の中には、「会社が本人に代わって、税金の手続きを全部やってくれるので、本人は何もしなくても大丈夫」と安心されている方もいらっしゃいます。けれども、会社は税金の手続きを全てやってくれるわけではないのです。まずは、会社に勤めている人の税金の納め方について見てみましょう。給与所得者の所得税の仕組み
●給料やボーナスにかかる税金は?・毎月の給料やボーナスから差し引かれる所得税は
毎月の給料やボーナスから差し引かれる所得税額は、給与所得の「源泉徴収税額表」により求められています。給与所得の「源泉徴収税額表」では、その月の給与所得額と扶養親族の数によって税額が決まっています。
・年末調整
年の途中、結婚や出産などで扶養親族の数が変わる場合があります。また、生命保険料控除や配偶者特別控除などは年末にまとめて控除することとなっています。年末調整の時期になると、会社にいろいろな書類を提出したのを覚えているでしょう。この手続を毎月やっていたら、会社も皆さんも大変なので、年末にまとめて調整するのです。
従って、1年間の給与総額に対する所得税額と毎月の給与から先に源泉徴収された所得税の合計額は、必ずしも一致しません。このため、その年の最後の給料(ボーナス)の支払を受けるときに、1年分の所得税額を計算して、毎月の源泉徴収税額との過不足額の精算が行われます。これを年末調整といいます。
大部分の給与所得者は、年末調整によって1年間の所得税の納税が完了しますので、確定申告の必要はありません。けれども、給与所得者でも、確定申告をしなければならない場合や、確定申告をすると所得税が還付される場合があります。
ここでは、確定申告をしなければいけない人、確定申告で税金が戻ってくる人をリストアップします。ご自身が当てはまるかどうか一度チェックしてみてください。
■確定申告をする人
●確定申告をしなければいけない人
給与所得者でも、次のような人は確定申告をしなければなりません。
・給与の年収が2,000万円を超える人
給与の年収が2,000万円を超える人は、会社で年末調整は行わないため、本人が確定申告をしなければなりません。一般のサラリーマンの年収が2,000万円を超えることはあまりないかもしれませんね。
・1か所から給与の支払いを受けている人で、給与所得や退職所得以外の所得金額(収入金額から必要経費を控除した後の金額)の合計額が20万円を超える人
最近は、ネットショップやアフィリエイトなど、インターネットでお手軽にできる副業が増えています。副業で収入がある場合、売上から必要経費を差し引いた所得(利益)が20万円を超える場合は、確定申告をする必要があります。
・給与を2箇所以上からもらっている人(※)
毎月の給与から源泉徴収する際に、会社に扶養控除申告書を提出しますが、この扶養控除申告書は1箇所にしか提出することができません。そのため、給与を2箇所以上からもらっている人の源泉徴収額は正しく計算されません。
(※)2か所以上から給与の支払を受けている人で、主たる給与以外の給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人。
●確定申告で所得税が戻ってくる人
確定申告をする義務のない方でも、次のような場合は、確定申告をすると源泉徴収された所得税が還付されることがあります。
・マイホームを住宅ローンなどで取得した場合【住宅取得等特別控除】
⇒住宅ローン控除[All About]
・多額の医療費を支払った場合【医療費控除】
⇒共働き夫婦の医療費控除、得するカンタン管理術
・災害や盗難にあった場合【雑損控除】
⇒ 雑損控除~取られたら取り返せ![All About]
・ふるさと納税など寄付金控除を受ける場合
⇒ ふるさと納税で所得税・住民税が戻る仕組み[All About]
・年の中途で退職し、再就職していない場合
⇒ 退職金から天引きされた所得税も確定申告で取り戻せる[All About]
給与所得者の特定支出控除の特例の適用を受ける場合
■給与所得者の特定支出控除とは?給与所得者には、勤務に伴う必要経費の概算控除として、「給与所得控除」が給与の年収額に応じて定められています。給与所得者の特定支出控除の特例は、その年中の特定支出の額の合計額が給与所得控除額の2分の1を超える場合に、確定申告により、その超える部分の金額を給与所得控除後の給与等の金額から控除できるという制度です。
特定支出とは、一定の1.通勤費、2.転居費、3.研修費、4.資格取得費、5.帰宅旅費、6.勤務必要経費(6.のみ上限65万円)をいいますが、この特例の適用を受けるには、給与支払い者による特定支出の金額を証明する書類などが必要です。
資格取得のために専門学校に通ったりすると、資格によっては授業料が100万円以上かかる場合があります。「その資格取得のための費用が給与所得控除額の2分の1を超える場合は、その超えた部分をサラリーマンの必要経費として認めましょう」というのが、給与所得者の特定支出控除の制度です。
■還付申告は、5年間さかのぼって申告できる!
還付申告は、還付申告をする年分の翌年1月1日から5年間行うことができます。従って、これまでに申告をしておらず平成31年(2019年)中に申告する場合は、平成26年(2014年)分までさかのぼって申告することができます。
確定申告の手続き、お役立ち情報
初めて確定申告をされる方にとっては、何から手をつけたら良いのか分からないという方もいらっしゃるのではないかと思います。そこで、確定申告を初めてする方のために、確定申告の手続きに役立つ情報をピックアップしてみました。■確定申告は、いつからいつまでにすればいいの?
前年分の所得税の確定申告期間は2月15日から3月15日までが原則です。申告期限が、土・日曜日の場合は、翌営業日が申告期限になります。平成30年(2018年)分の確定申告期限は、平成31年(2019年)2月18日(月)から3月15日(金)までになります。
所得税の還付申告の方は、平成31年(2019年)2月18日(月)以前でも申告書を提出することができます。確定申告の期間になると税務署は混雑しますので、還付申告をする方は、早めに税務署に行きましょう。
■用紙を手に入れる場合
確定申告に必要な申告書は、最寄りの税務署のほか、各市区町村の窓口や還付申告センターで受け取ることができます。還付申告センターは、利便性の高いターミナル駅などに設置され(1月下旬頃決まります)、納税者の方々の住所地を問わず、申告書用紙や各種届出書などの交付、申告書作成のアドバイス及び申告書の受付を行っています。
税務署や還付申告センターに行くのが面倒という方は、税務署から申告書類を郵送してもらうこともできます。必要な申告書用紙の種類や手引き、申告する内容を簡単に記載したメモとともに返信用封筒(あて名をご記入の上、重量に応じた所要額の切手を貼付)を入れて、税務署へ送付すると、確定申告書用紙などを返送してくれます。
■書き方等がわからない場合は?
まずは、国税庁のHPで、手引きや記載例を入手してみましょう。手引きには、具合的な事例や図表をつかって、申告書の書き方を優しく解説しています。
それでも書き方が分からない場合は、最寄りの税務署か還付申告センターで税務署員に相談をしましょう。無料で親切にわかりやすく説明してくれます。また、電話による税務相談も受付しています(税についての相談窓口)。
■「確定申告書等作成コーナー」で作成する場合
国税庁ホームページ「確定申告書等作成コーナー」では、必要事項を入力しながら所得税の確定申告書などのほか、付表・明細書・計算明細書などを作成することができます。入力画面に案内が表示され、金額等を入力すると税額などが自動計算されるので、とても便利です。完成した書類は、カラー印刷して、そのまま使用することができます。
■確定申告の提出方法は?
●税務署に提出
確定申告書の提出は、住所地を管轄する税務署宛に行います。税務署は、土日・祝日は休みですが、税務署の時間外文書収受箱へ投函することにより申告書を提出することができます。
●郵送による
申告書は、郵便又は信書便により、税務署宛に送付することも可能です。郵送の場合は、郵便局の消印の日付が提出日となるため、3月15日の消印があれば期限内に申告したことになります。
●「e-Tax」による電子申告をする
国税庁のHPの確定申告書等作成コーナーまたは、専用のe-Taxソフトを用いて、申告データを作成し、電子申告をすることができます。
平成31年(2019年)1月から、「確定申告書等作成コーナー」と「e-Tax」がより便利に
平成31年(2019年)1月から、「確定申告書等作成コーナー」が新しくなり、スマートフォンで確定申告書を作成し、「ID・パスワード方式(*1)」を利用して、e-Tax送信ができるようになりました。また、e-Taxは、これまで電子証明書などの事前準備が必要でしたが、「マイナンバーカード方式(*2)」と「ID・パスワード方式(*1)」の選択ができるようになりました。
(*1)(*2)いずれも、申告書を送信する際、マイナンバーの入力が必要です。
詳しくは、「確定申告特集」(国税庁)をご参照ください。
今回は、初めて確定申告をするという方のために、確定申告手続きの概要について解説しました。次回は、「共働き夫婦」という視点で、確定申告について書こうと思います。乞うご期待!!
→共働きの確定申告、総チェック! 得情報編
※詳しい確定申告の手続きや税金に関する相談は、お近くの税務署又は税理士にご相談ください。
【関連リンク】
・共働きの確定申告、総チェック! 得情報編
・共働き夫婦の医療費控除、得するカンタン管理術
・All Aboutマネー[確定申告]