「金利が上がり出したら長期固定」がセオリーだが
このところの金利上昇に伴って、公庫融資や銀行ローンの10年固定などの長期固定金利で住宅ローンを借りる人が増えているそうです。たしかに、金利が上がり始めたら早めに長期固定金利で借りるのがセオリーです。変動金利や2年~3年の短期固定金利(以下、ひと括りに「短期固定」と総称します)で借りると、すぐに金利が上がって返済負担が増えるリスクがあるからです。とはいえ、金利が上がっているのは長期固定だけで、短期固定は低金利のままです。それどころか、各銀行が金利優遇キャンペーンを競っているおかげで超低金利のローンが増えており、みずほ銀行や三井住友銀行のように1%を切る商品も登場しています。一方で長期固定は公庫でさえ6年ぶりに3%の大台に乗っているので、短期と長期とで2%以上の差がついているのです。
金利が上昇しても総返済額ではトクするケースも
長短の金利差がこれだけ開いていると、「金利上昇リスクはあっても、短期金利の超低金利は魅力だ」と考えるのも自然な考え方でしょう。実際、1000万円を35年返済で借りるケースを考えると、3.0%の公庫だと毎月返済額は3万8485円ですが、1.0%の3年固定なら2万8229円と1万円以上軽くなります(図表1)。■図表1 「金利が上昇した場合の返済額の比較」
(1000万円を35年返済で借りたケース)
1%というのはキャンペーン金利なので、3年後には金利が確実に上がります。3年固定の店頭金利そのものもアップして3.0%になっていたとすると、4年目から3年間の返済額は3万7595円。それでも公庫より少し低い金額です。さらに3年後の7年目から金利が5%にアップしていたとすると、返済額が1万円ほどアップして公庫より高くなります。2年固定や3年固定などの固定期間選択型は「返済額は上がっても直前の1.25倍まで」という変動金利のような規定がなく、金利が上がれば返済額もストレートに上がってしまうのです。
ただ、3年固定は当初の返済額が軽いため、9年間の総返済額では公庫より7万円ほど軽くなっています。9年後のローン残高でも、3年固定のほうがやや少なくて済む計算です。この結果はひとつのシミュレーションに過ぎないので実際にこのとおりになるわけではありませんが、短期固定だからといって金利上昇で直ちに損をするわけではないのです。