月経関連過眠症とは
女性の場合、月経に関連して起こる睡眠障害があります。今回は月経関連過眠症について、解説します。<目次>
- 生理前に眠すぎる……PMS症状でもある月経関連過眠症の割合
- 月経関連過眠症の原因は黄体期のプロゲステロンか
- 月経関連過眠症の症状と診断基準……PMS症状の強さとの関連も
- 月経関連過眠症の治療法にはピルも有効
生理前に眠すぎる……PMS症状でもある月経関連過眠症の割合
多くの方が月経による睡眠の悩みを抱えています。男性にも女性の苦しみを分かってもらいたいですね
月経前に眠れなくなる状態を「月経前不眠症」といい、強い眠気に悩まされることを「月経関連過眠症(月経前過眠症)」といいます。閉経の前後に眠れなくなる「閉経時不眠症」も、月経に関連して起こる睡眠障害の1つです。
月経の前に心身が不調になる「月経前症候群(以下、PMS)」がある人は、女性の30~80%もいます。ある調査※では、41%の女性が月経に関連して睡眠に変化があり、そのうち、1%は月経前不眠症、43%は月経前過眠症、5%は月経時不眠症であったと報告されています。かなり多くの人が、月経による睡眠の悩みを抱えているのですね。
月経関連過眠症の原因は黄体期のプロゲステロンか
月経周期は、「卵胞期」と「黄体期」の2つに分けられます。月経から排卵までが卵胞期、排卵から月経までが黄体期です。黄体期には、「プロゲステロン」という女性ホルモンの血中濃度が高くなります。このプロゲステロンには体温を上げる働きがあり、卵胞期に比べて黄体期の最低体温と最高体温の差は小さくなります。私たちは体温が下がると眠くなり、体温が上がるときに目が覚めます。黄体期には1日の内での体温の変化が小さくなるので、睡眠と覚醒のメリハリも小さくなって、日中に眠気が強くなると考えられています。
プロゲステロンには、催眠効果もあります。医師が処方する睡眠薬は、脳でガンマ・アミノ酪酸の働きを助けて催眠作用を発揮します。プロゲステロンが分解されてできた「アロプロゲステロン」にも、ガンマ・アミノ酪酸の働きを助ける作用があります。アロプロゲステロンの催眠効果は、医師が処方するベンゾジアゼピン系睡眠薬と同じほどの強さがあります。
月経関連過眠症の症状と診断基準……PMS症状の強さとの関連も
典型的な月経関連過眠症では、月経の約1週間前から日中の眠気が強くなり、月経の開始とともに眠気が軽くなるパターンをとります。下腹部痛や頭痛、イライラ、憂うつな気分など、PMSのほかの症状が強い人ほど、日中の眠気も強くなる傾向があります。上で述べた過眠のパターンをとり、強い眠気が2日以上続き、このような状態が年に1回以上あると、月経関連過眠症と診断されます。
月経関連過眠症の治療法にはピルも有効
月経関連過眠症がひどくなったら
生活指導としては、睡眠の質を高めるための生活習慣が勧められます。たとえば、日中に日光をしっかり浴びたり、昼夜の生活にメリハリをつけたりしましょう。
気分転換を行うことも大切です。症状がひどいときには生理休暇を取るなどして、体調の変化に生活のパターンを合わせることも必要です。
専門家によるカウンセリングも、効果があります。基礎体温を記録したり睡眠日誌をつけたりして、月経周期と過眠症状の関連を理解しましょう。ひどい眠気も月経がはじまると軽くなることを知れば、気持ちが楽になり対処の仕方も見つかります。
薬で使われるのは、経口避妊薬。いわゆるピルです。経口避妊薬で排卵を起こさせないようにすることで強い眠気がなくなります。しかし、経口避妊薬を止めると過眠が再発するので、ある程度の期間、使い続ける必要があります。もちろん妊娠を希望されている方を始め、いくつか条件をクリアしないと使えないので、主治医と相談の上で使用するようにしましょう。
閉経などで排卵が止まれば、毎月繰り返す強い眠気はなくなります。もちろん、それまで待てなければ、婦人科などで専門的な治療を受けるとよいでしょう。
快眠できる睡眠環境を作る方法や眠気を覚ますコツなど、睡眠についてもっと詳しく知りたい方は、「理想の睡眠環境・寝室・ベッド・生活習慣」や「眠気のコントロール法」もあわせてご覧ください。
■参考文献
*「女性の睡眠とホルモン」バイオメカニズム学会誌、Vol.29,NO.4(PDF)
【関連記事】