監督者としての責任は?
それでは、未成年者である子供が既に自立していて、両親が運行供用者にあたらないようなケースでは、被害者は加害者の両親にその責任を問うことはできないのでしょうか?民法714条によれば、
第714条 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。 (以下省略) |
ということで、「責任無能力者」(責任能力を備えていない者)の監督義務者は、その責任無能力者が第三者に与えた損害を賠償する責任を負うこととされているのですが、通常免許を持って運転している子供には責任能力が認められると考えられますので、残念ながらこの条文を根拠に両親の監督責任を問うのは難しそうです。
だからといって、未成年者である子供が交通事故を起こす具体的な危険性を認識していながら、放置していたような場合にまで、両親に監督責任がないとするのは社会通念上無理があります。このような場合には、両親の監督が行き届かなかったことを原因として事故が発生したということが証明できれば、被害者は加害者の両親に対して不法行為に基づく損害賠償を請求することができると考えられます。
しかし、現実的には被害者が加害者の両親の監督不行き届きと事故の因果関係を証明するのは非常に難しく、証明できたとしても賠償を受けることができるかどうかについては、また別の問題です。このようなケースを考えると、やはり人身傷害保険を付けて、自分の身は自分で守るほかなさそうです。