住宅ローンの損得を考えてみる
たとえば住宅ローンを組んだときの損得をおおまかに考えるとき、以下のような項目を考えてみるといいでしょう。家を買うのにかかった費用(ア)
(A)頭金(自己資金)額(税金等取得関連費用含む)
(B)住宅ローンの借入額
(C)住宅ローンに支払う利息の総額
住宅ローンで得られる価値(イ)
(D)ローン完済時の正味の不動産価値(売却後の手取り)
(E)ローン完済までトクした家賃額(固定資産税等は相殺)
しかし、住宅ローンを買うときこうした比較検討はあまり行わないと思います。金融機関がこうした試算を提示することもないでしょう。なぜなら、費用(C)も、価値(D)(E)も将来の変動の余地が大きいため、計算がしにくいからです。
逆にいえば、計算がしにくいことと、家に対する夢を切り札に(D)(E)を過大評価させることができれば、費用合計(ア)が高くてもお客は借りてくれることになります。
仮に3000万円の物件を仮定してみます。頭金は500万円とし、残りを35年固定ローン年利3.2%で借りたとしてみます。
家を買うのにかかった費用(ア) 5158万円
(A)頭金(自己資金)額 500万円(うち、取得実費を10%300万円と仮定)
(B)住宅ローンの借入額 2800万円
(C)住宅ローンに支払う利息の総額 1858万円
住宅ローンで得られる価値(イ) ???万円
(D)ローン完済時の正味の不動産価値(売却後の手取り) ??万円
(E)ローン完済までトクした家賃額 2940万円
(家賃月8万円と仮定、固定資産税を概算月1万円分相殺)
もし、以下の仮定なら、35年後(D)が2218万円以上の価値があれば(イ)が(ア)5158万円を上回りトクということになります。さて、これは分のいい勝負になるでしょうか? 難しいところです。3000万円で買った家だとしても、正味の不動産価値はそれ以下からスタートしますし、売却するときはいろんな費用もかかるからです。
もし、一戸建てなら建物部分は老朽化しているでしょうから、土地だけでこの価値までの値上がりを期待することになります。あるいはリフォーム費用を負担のうえ、もっと高い値段の売却を考えなければなりません。なかなか厳しい勝負に思えます。
もし、マンションであれば土地の不動産価値はほぼゼロですから、建物のみでこの価値を期待しなくてはなりません。地震も偽装問題もなく、建物が35年後も問題なく建ち続けていて補修も問題なく、その物件(内装や間取りも含めて)にそれだけの魅力が生じることが必要です。これもかなり厳しい勝負です。
さらに、取得時点にかかる税金であったり、マンションなら積立金等の費用を含めて考えると、損得はかなり微妙であることがわかります。
ひらたく言えば、かなりの地価の値上がりなどがなければペイしない勝負ということです。「夢」と簡単に語るにはかなり難しい買い物を私たちはしているのです。
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